外登法問題国際シンポジウム1990年キリスト者宣言
●1990年7月4日●
我々は、1990年7月2日から4日まで、関西学院大学千刈セミナ-ハウスにおいて「在日韓国・朝鮮人の解放と日本の教会の役割」とのテ-マのもと、外登法問題国際シンポジウムを開催した。
イエス・キリストを主と告白し、み足のあとを歩もうと決意したカトリック・プロテスタントおよび8つの地域外キ連の協議会である我々は、1980年にたった一人の指紋拒否から始まった反外登法運動に参与し、主の導きの下に、継続した運動を展開してきた。我々は、指紋押捺拒否への報復弾圧や、再入国不許可・在留権の剥奪という事態のなかで、国家が個人の生き方に露骨に干渉してくるありさまを目のあたりにした。
我々は、韓国カトリック正義と平和委員会、韓国キリスト教協議会の代表団を迎え、活発な論議を行ない、以下の合意に達した。我々は、世界教会協議会、アジアキリスト教協議会をはじめとして国際的な人権運動と共闘しながら、90年代の反外登法運動をさらに広く展開し、在日韓国・朝鮮人の解放にむけた闘いを教会の使命として担い続けていくことを決意した。
さる4月30日、ソウルで開かれた日韓外相会談は、「協定第三代」の在日韓国人の処遇についての政治決着を発表した。しかしここでの「永住」認定は、在日韓国・朝鮮人全体を対象にした無条件の永住でもなければ、子々孫々に保障されるものでもない。政府間合意は、25年前に在日社会に南北分断を持ち込んだ「日韓法的地位協定」の枠組みにこだわり続けるとともに、法務大臣の自由裁量による再入国許可制度と、退去強制制度を継続するものとなっている。これは、当事者の在日韓国・朝鮮人が望む永住権の付与とはほど遠いものである。
我々は何よりも、当事者の頭越しになされた今回の合意を許すことができない。根本的原因としての日本による植民地支配に対する謝罪が表明されていないことは、在日韓国・朝鮮人にとっても、日韓民衆総体にとっても受け入れられる「合意」ではないということである。また我々は、侵略と差別の歴史・現実と切っても切れない天皇制の問題について、今後とも問い続けていく。
日本政府は、外登法の常時携帯制度や重罰制度をあくまで維持する一方、いまだ4人しか生まれていないという「協定第三代」に指紋押捺義務が生じる14年後までに、指紋押捺に代わる「同一人性確認」の方法を開発するとしている。80年代を通しての大衆的な指紋制度拒否は、国家による民衆管理、「民族としての生」の侵害に対する拒否であり、また差別的日本社会、過去の歴史を反省しない日本への拒否であった。しかし、日本政府は指紋制度による権利侵害の過去を反省することなく、在日外国人の治安管理の対象とみなし続け、新たな管理システムの導入をもくろんでいる。我々は、写真などによる個人管理にくわえて、一層の管理強化がなされることに反対する。
日本におけるキリスト教会は、今夏、外国人登録証の大量切替え期を迎えて、指紋転写拒否、切替拒否、指紋カ-ド(登録証)携帯拒否という良心的不服従の闘いを支援する広範な陣型を準備しなければならない。とくに16歳で指紋を拒否している青年たち、1991年をこえて未来の在日のアイデンティティを担う若い世代の闘いを強力に支援しなければならない。
80年代における反外登法運動は、日本社会が在日外国人を住民として受け止めるべきであるという視点を一貫して提示してきたが、その視点はいまや各国の教会・市民団体の闘いによって国際人権規範として確立されようとしている。しかし、日本の人権状況は、その規範に照らすとき、惨憺たる現実といわざるをえない。
我々の歩みは、人権・正義・平和を求める90年代世界の民衆の歩みと決して別々のものではない。国家が人権の中身を決めるのではなく、我々の闘いが人権を保障させる世界を生み出すのだということを確認し、世界の人権運動との連帯を強めたいと願う。
*我々は、今回の日韓政治決着と盧泰愚韓国大統領来日が、外登法問題になんらの解決ももたらさなかったことを確認した。我々は、外登法問題と取り組み続けるという当初の姿勢を再確認し、ことに 100余名の在日韓国・朝鮮人青年らの指紋拒否をはじめとする反外登法の闘いを支援するものである。さらに、90年代の教会の宣教のわざとして、居住権・民族教育権の保障、就職差別の撤廃、参政権問題などをめぐる在日韓国・朝鮮人の真の解放を求める取り組みが強められるよう求めていく。
*外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会(外キ協)は、各地の外キ連のネットワ-ク化、合意形成と全国レベルの連帯をさらに強めるとともに、とくに国会への働きかけ、日本における人権NGOの強化につとめる。
*各教団、地域の教会において、外登法の抜本改正を求める合意を、あらためて確認するように求める。また、「単一民族国家日本」という考え方を改められるような歴史教材、人権教材の開発を、教会、キリスト教主義学校において促進する。
*反外登法運動と、国内の他の人権運動、他宗教における運動との連帯を深める。また、韓国教会をはじめ、世界教会協議会、アジア・キリスト教協議会、その他のNGOと連帯しつつ、国際人権活動(国際人権条約などの批准、国連人権委員会への働きかけ)を進める。
*日韓両教会は、それぞれの政府にたいし、今回の日韓政府合意の内容を明らかにするよう申し入れるとともに、以下の通り要求する。
1)指紋制度、常時携帯制度、切替制度、重罰規定の全廃をふくむ外登法の抜本改正を行なうこと。
2)在日韓国・朝鮮人、台湾人、中国人に子々孫々にわたる永住権を無条件に付与し、再入国許可制度、退去強制制度を除外すること。
3)地方公務員採用、教員採用の国籍条項を廃止すること。
4)在日韓国・朝鮮人の民族教育権を保障すること。
第2回外登法問題国際シンポジウム共同宣言
●1991年10月9日●
私たち、韓日両国のキリスト者は、1991年10月7日から9日にかけて、第2回外国人登録法(外登法)問題国際シンポジウムを、「宣教の課題としての在日韓国・朝鮮人の人権」の主題の下、ソウル韓国教会100周年 記念館において開催した。
今回のシンポジウムは、韓国基督教教会協議会人権委員会、日本外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会の共催で行なわれたが、会議には韓日キリスト者の他、韓国仏教者の参加をも得た。貴重な討議と共有化の場を与えられたことを心から神に感謝するものである。
1980年に本格的に開始された指紋押捺拒否闘争は、外登証常時携帯制度の撤廃運動と共に、80年代外登法抜本改正運動の爆発的高揚を導いた。
この闘いは、在日韓国・朝鮮人にとっては、日本社会の排外主義、民族差別と闘う中で日本における在日韓国・朝鮮人の民族的解放と自由と人権の回復をもたらそうとするものであり、日本人にとっては自らの歴史的責任を自覚し、自らの主体的課題として日本社会の差別構造を変革する責任を迫るものとなった。
とりわけ日本のキリスト者は、カトリック、プロテスタント共同による初めての本格的なエキュメニカル運動を展開し、「宣教課題」として、この闘争を位置付けることができた。
また、韓日両国の関係者だけにとどまらず、宣教師やCCA、WCC等を通じ、外登法問題をめぐる国際的ネットワ-クの形成も為されたのである。
この外登法抜本改正運動は、日本政府のあらゆる小手先の「改善策」を排し、真に在日韓国・朝鮮人の主権が回復される社会を目指す持続的闘争へと発展した。
こうした外登法抜本改正運動の展開の中で、日本政府は1991年1月10日、海部首相訪韓の際に発表した「覚書」の中で、1992年1月通常国会において指紋押捺制度廃止法案提出を約束せざるを得ない状況にまで追い込まれたのである。
つまりは、在日韓国・朝鮮人の管理抑圧機能を果たす外登法の一方の主軸として40年間維持され続けてきた指紋押捺制度が廃止されるわけであり、80年代指紋押捺拒否闘争の大きな成果と評価されるべきである。
1.しかしながら、実際には、日本政府は「指紋」の代替手段を持ち出しているのであり、単に指紋押捺という管理手段を変更しようとしているに過ぎないことを指摘しなければならない。すでに、日本政府は「指紋転写」制度を実行しているが、これに対し現在約150名にものぼる転写拒否の闘いが行なわれている。また今もなお16歳になり新規更新時の指紋押捺拒否が継続的に闘われている。
これらの闘いを断乎として支援しなければならない。
また指紋制度が廃止されたとしても、日本政府は決して「指紋原紙」の廃棄を言明したわけではない。この指紋原紙をいつでも利用する余地を保持しているのである。
私たちは、日本政府に対して全ての指紋原紙の廃棄を求めるものである。
さらには、外登証常時携帯制度も実質的には運動の中で、「弾力的運用」という形で空洞化させているが、私たちはあくまでも常時携帯制度と重罰規定の廃止を求めて闘いを継続していかねばならない。なぜならば、日本政府は主に警察当局の取締り機能を保持する目的であくまでも「制度」を保持させようとするであろうし、ここで私たちの運動姿勢を弱めようものなら、制度撤廃どころか運用方針をも元に戻すことを許してしまうのである。
2.指紋押捺拒否にからむ裁判闘争も今尚継続されていることを決して忘れてはならない。マッキントシュ牧師、アルトマン宣教師、鄭宏溶さんの在留権訴訟、ならびに崔善愛さんの再入国訴訟が今現在も闘われている。
私たちは、これらの裁判闘争を勝利の日まで共に支援し続ける決意である。
以上のように、私たちの闘争は「指紋押捺」という象徴的制度を廃止に追い込むことには成功したけれども、外登法の本質的抜本改正は未だ勝ち取られていないことを、ここで再度確認しなければならない。
私たちは、外登法の本質的抜本改正に向けてさらなる共同闘争を展開することを確認した。
3.この間の外登法抜本改正運動はまた、定住外国人、あるいは滞日外国人労働者をめぐる人権状況に対する日本国内外における認識と関心を深める契機ともなった。単に外登法だけを問うのではなく、在留権、法的地位問題をも含めた外登法-入管法という日本政府の在日外国人管理体制総体を問う闘いとして捉え、取り組むべき問題として認識されてきている。本年4月に成立した、いわゆる「入管特例法」には退去強制条項と法務大臣の自由裁量による再入国許可制度が残り、また日本政府の過去の植民地支配と侵略戦争の結果生じた在日韓国・朝鮮人の存在を歴史的背景から切り離して処理しようとする意図が見受けられるものである。
外登法抜本改正運動は他のあらゆる人権問題、反差別闘争との関連の中で考えられるべきである。指紋押捺制度の廃止の代替措置として導入が検討されている家族登録制度は日本人自らが管理されている戸籍制度につながるものであるし、その戸籍制度に表れた性差別の問題も日常的課題として認識される必要がある。
4.日本の社会構造を変革していくために「教育」の問題を欠かすことはできない。日帝植民地支配、強制連行等による罪責、在日韓国・朝鮮人の差別抑圧状況の原因を確実に学校教育の場で考えなければならない。
また、これからの在日韓国・朝鮮人の未来を考える時に、自らが主体的にそれを形成していくためには、民族教育を受ける権利の保障が何よりも最優先されるべきである。私たちは、日本政府は積極的に多民族教育を正式に日本の学校制度の中に位置付けるべきであると考える。
その他、状況理解と変革のために、人材育成という点から韓日交換訓練プログラム、在日青年の留学を援助するためのスカラ-シップや寄宿制度等も提案された。
5.戦後処理問題は、今協議会においても、外登法問題とは不可分の大変重要な課題として共有された。
日本人は具体的に一つ一つの自らが犯した罪責の事実を明らかにし、朝鮮民衆に対して謝罪と戦後処理(賠償、補償)をしなければならない。
とりわけ、徴用、強制連行問題、朝鮮人従軍慰安婦問題、朝鮮人被爆者問題、在サハリン朝鮮人問題、郵便貯金問題等についての賠償と戦後補償を日本政府、日本企業に対して求めていかなければならない。このような作業は外登法を抜本的に改正させていくための重要な必要条件なのである。
私たちはこれらの事実に対して、すでに明らかになっているもの、未だ明らかにされていないものを含めて、調査を韓日の教会が主体的に担うことを確認し、韓日両国会にこの問題のために特別委員会を設置することを要請する。
6.外登法問題、そして戦後補償問題に関わる時、日本の教会はその自らの罪責を真に告白しなければならない。アジアとの問題、歴史との関係において存在をかけた罪責の告白を行なうことによって初めてこれらの問題と取り組むことができる。
洗礼準備の場、キリスト教教育の場、神学教育においても、フィ-ルドワ-ク等を中心として具体的な出会いを通して課題を学ぶことができる機会を生み出していかなければならない。
7.私たちの共同の力において展開してきた外登法抜本改正運動は、日本政府の指紋押捺制度廃止を引き出した。このことは私たちの共同闘争の大きな地平であり、一定の勝利として評価されるべきである。しかしながら、以上見てきた通り、外登法をめぐる課題は依然として本質的問題を残しているのであり、私たちはキリスト者の使命としてさらなる外登法抜本改正運動を展開していかなければならない。
この運動は、朝鮮半島統一問題に代表される軍事問題、政治経済問題を含めた東アジア地域全体の正義と平和の課題と不可分に考えなければならない。したがって、私たち韓日両国のキリスト者はアジアの教会に対して、共に連帯してこの問題と取り組むことを訴える。
8.現在まで韓国の教会と日本の教会との間で進められてきた協議の相手に朝鮮キリスト教徒連盟を含めて共同して問題を解決することを希望する。外登法問題のみならず戦後処理問題も韓・朝・日の教会が共同して協議できるよう努力する。
主にある私たち姉妹兄弟、特に韓国基督教教会協議会、日本外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会の姉妹兄弟は、在日民衆のあらゆる権利と自由が保障される社会の実現のために、力を結集し、共に行動し、共に祈ることを、ここに宣言するものである。
『不法に虐げる者から彼らの生命を贖いますように。王の目に彼らの血が貴いものとされますように』(詩篇72:14)
第3回外登法問題国際シンポジウム共同声明
●1993年11月5日●
私たち日韓両国のキリスト者は、1993年11月3日から5日にかけて、第3回外登法問題国際シンポジウムを、「在日外国人と共に生き、共に生かし合う社会を!―私たちは外国人登録法の抜本的改正を求める」の表題のもと、東京の日本カトリック会館において開催した。これは、10月3日から11月2日にわたる全国キャラバンの成果をふまえて実施されたものである。
今回のシンポジウムは日本側が、外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会・日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会、韓国側が、韓国教会在日同胞人権宣教協議会・韓国キリスト教教会協議会人権委員会の共催で行なわれたが、会議には韓国天主教正義具現全国司祭団・韓国基督青年協議会・アジアキリスト教協議会都市農村宣教部等の組織からの参加も得られ、貴重な討議と共有化の場が与えられた。
私たちは、日本の外国人登録法の抜本的改正を求めて今日まで共に運動を担ってきたが、今回さらに問題解決へ向かって運動を推進していく知恵と勇気が与えられたことを神に感謝する。
今年1月8日から「改正」外国人登録法が実施された。16歳以上の永住者の指紋押捺制度が廃止されたことは、1980年代に日本全国で継続的に取り組まれた反対運動と、それに呼応し加えられた韓国教会をはじめ海外からの支援・連帯の成果である。私たちは、このように運動の盛り上がりが国の定めた制度を変革へと向かわしめたという事実を画期的な出来事として評価したい。
しかしながら、私たちは今回の「改正」に際して決して喜ぶだけでは済まされぬ状況に立たされている。政府法務省は、今回「改正」の名のもとに、指紋押捺制度に代えて家族登録制度・署名登録制度・写真登録制度を導入し新しい強度な管理システムを画策し導入してきた。永住者に対しては、指紋押捺義務を、一見「免除」したかのように「改正」したが、一方これまで法務省が採り続けてきた指紋は依然として保管されているのであり、その上で新たに詳細な家族登録が義務づけられ、写真登録の条件が強化され、署名登録が強制されるに至っては、今回の「改正」によって、当局による個人情報の完全な掌握化と管理強化が図られたと言わざるを得ないのである。さらに、永住者に対して何らかの「譲歩」や「免除」を与えたかのように装飾してはいるが、永住資格を持たない人々は相変わらず指紋押捺義務が課せられていくこととなり、在日外国人に対する分断管理を巧みに行なおうとしている。
今日、外国人登録者数は、130万人に至った。その内、永住資格を持っている人々は約半数である。つまり、立場の異なる在日外国人を、指紋押捺の有無ということを境に切り放しつつ管理していこうとしているが、そこにこそ、戦後を一貫している排外的体質を見ることができるのである。そのような政府の目論見を見抜きながら、日本人と永住外国人・非永住外国人が連帯していくことこそ、我々の運動にとって今後重要な立脚点となっていくのである。
永住資格を持つ人々の多くは、日本の植民地支配の結果、戦前から日本に住んでいる朝鮮半島・台湾・中国出身の人々である。それは日本の侵略戦争がアジアの人々に与えた犠牲のあらわれなのである。しかし、その人々のうちでも、戦後一時祖国に帰国し、やむを得ない事情により再び日本に戻って来た人々は、永住資格を取れないという事態が生じた事実を忘れてはならない。「1945年9月2日の時点で日本に在住」という特別永住資格の有無の境界線を一方的に引くことで、多大な責任を放棄し軽減しようとした政府の無謀が、今日にいたるまで同じ立場の人々を分断していく結果を引き起こしている。そして又、その他の理由で永住権を剥奪された人々も多々いることを忘れてはならない。また、さらに近年日韓両国における経済拡張を背景にして、ますます多くの外国人労働者が私たちの隣人として暮らしはじめている。日常的に差別され外国人ゆえに権利を奪われている彼ら、彼女らへの連帯がますます重要な教会の課題となってきている。
こういった様々な背景の中、今回の「改正」外登法下では、在日外国人の中にも、指紋押捺を依然として強制される人々の存在と家族登録・署名登録などで管理される人々の存在が並列的にたち現れることとなったのである。
さらに、依然として外国人登録証の常時携帯は義務づけられたままであり、この義務に従わない場合への重罰は、在日外国人にとって物理的にも心理的にも重くのしかかっていくこととなる。
日本政府法務省の在日外国人に対する姿勢は、治安維持・犯罪予防と取締の対象としての位置づけであり、その点において戦前から戦後一貫した差別・同化・排外主義政策が改められることなく継承され続けている。折しも、今年10月27、28日の両日ジュネーブで行なわれた国際人権(自由権)規約委員会において、日本の外登法が人権侵害状況として由々しき実態を示しているとの指摘を受けた。これは、外登法の抜本的改正を取り組み続けた私たちの姿勢が、世界の人権感覚に通じるものであったことを確信づけてくれるとともに、日本の外登法がいかに世界に通用し得ないものであるかを証明している。
私たち日韓両国のキリスト者は、これからも日本における外国人登録法の抜本的改正を訴え続けながら、日本社会の中に横たわる差別・同化・排外的な意識とそれが具現化した制度の変革と撤廃とをかち取っていく取り組みを果敢に進めていくことを決意する。
私たちは、日韓両教会によるシンポジウムにおいて以下の活動計画を相互に確認した。
1.日韓両教会が連帯して、日本の外国人登録法の抜本的改正をめざす運動に取り組んでいく。韓国教会在日同胞人権宣教協議会の「苦難の現場訪問プログラム」の継続を支援し、日韓両教会の歴史学習、連帯関係を強化する。
2.日韓両教会が連帯してそれぞれの国における外国人差別に取り組み、その解決を目指していく。特に、互いに全ての外国人に開かれた社会の実現を目指して忍耐強く地域社会の住民として位置付ける運動に取り組んでいく。
3.指紋押捺拒否を理由に不当な制裁を受けている人々の在留資格その他の権利の即時回復を求め、国会・法務省など関係機関に働きかけるとともに闘われている裁判を支援する。
4.日韓両国において、各々、外登法に関する資料をできるだけ早く発行する。
A.韓国においては、在日同胞の歴史的状況や現在の法的地位に関しての解説や、韓国教会における在日同胞問題への取り組みの歴史をまとめた資料を制作する。
B.日本においては、「在日外国人と共に生かし合うために」というテーマのもと、a)神学的リフレクション、b)10年の総括、c)資料、d)今後に向けたヴィジョンを骨子とする資料を作成する。
5.日韓両国において、国際人権規約、人種差別撤廃条約、移住労働者の権利条約の完全批准と国内実施措置の確保を求める運動を推進し、外国人住民または民族的マイノリティーに対する国際人権基準についての理解を深める。
6.外登法問題のみならず戦後処理・戦後補償の問題を、今後も韓・朝・日の教会が共同して協議できるよう希望しつつ努力する。
7.アジア各地のマイノリティーは、登録制度をはじめ、差別政策や同化政策にさらされている。とくに二重の差別を受けている女性たちの状況に留意する。在日韓国朝鮮人の人権闘争と、それに連帯してきた日韓教会の歩みをアジアの諸教会と共 有しながら連帯の道を模索する。また、多民族共生をめざす社会制度のあり方についても広く各国の事例を研究する。
8.第4回外登法国際シンポジウムを、1994年に韓国ソウルで開催し、上記の課題の深化と進展を確認しあう。
第4回外登法問題国際シンポジウム共同声明
●1994年11月23日●
私たち日韓両国のキリスト者は、1994年11月21日から23日にかけて、第4回外登法問題国際シンポジウムを、「戦後処理、戦後補償と在日韓国・朝鮮人の人権」という主題のもと、韓国ソウルの漢江ホテルにて開催した。
今回のシンポジウムは、韓国側が韓国基督教教会協議会人権委員会・韓国教会在日同胞人権宣教協議会、日本側が日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会・外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会の共催で行われ60名が参加した。そして「敗戦後50年」を直前に控えた歴史的文脈の中で貴重な提言への傾聴と真剣な討議、そして課題の共有化がはかられた。
また私たち参加者一同は、韓国挺身隊対策協議会主催の日本大使館前の元日本軍「慰安婦」への日本政府の公式謝罪、個人補償を要求する第144回(4周年記念)デモンストレ ーションに参加し、韓国挺 身隊対策協 議会の闘いに連帯を表明した。
この場を通し、私たちは両国の協力のもとにこれまで在日韓国・朝鮮人の人権問題に取り組んできた意義とその成果を再確認するとともに、未だに解決できていないことと新たに問われ始めたこととを更なる課題として共有し、取り組んで行く決意を与えられた。
今回のシンポジウムでは、冷戦構造の崩壊した世界の中にあって、特にアジアにおける新しい連帯と協力・「共生社会」の実現につとめ、神のシャロームの成就のために、日韓の教会が為すべき和解と、共に抱くべきビジョンとが求められたいえる。
今日、世界のあらゆる舞台でマイノリティーからの問いかけが、民衆レベルの新しい結集軸の形成に大いなる示唆を投げかけているが、ことに日韓両国にとって在日韓国・朝鮮人の人権の回復と両国内における外国人労働者との共生の問題は、この世界的うねりに応答する重要課題として位置づけられねばならない。
私たちは、動き行く世界の中で、私たちの為すべき課題が今回新たに示されたことを主なる神に感謝するものである。そして、私たちは神の指し示すシャロームの実現に向けて、主なる神のみ前と私たち自身が立たされている歴史のただ中で、悔い改めを決意し神の和解と新たな創造に参与する。
1980年代以降、日本国内において全国的規模で闘われた指紋押捺制度撤廃運動は、指紋採取によって外国人を管理しようとする制度が、いかに支配的かつ差別的であり人権侵害に満ちたものであるかということを明確に指摘し、抵抗し、さらに韓国をはじめとする国際世論とともにこの制度を包囲することで、従来どおりの存続の道を断ち切ることに成功した。それは、日本国内におけるキリスト教界の教派を越えた協力とねばり強い運動の成果であり、韓国教会をはじめエキュメニカル諸団体の連帯による具体的成果でもあったことは言うまでもない。
しかし、1993年1月8日、日本政府が「改正」した新たな外国人登録制度は、表向きは指紋押捺制度の撤廃を目玉にしてたが、それは必ずしも1980年代の運動の主張を受け入れることとしてではなく、それまでの管理状況を保守しつつ更に補強していく新システムの制定と抱き合わせる中で、指紋押捺制度のみを除外したにすぎなかった。
「改正」された現行外登法では、署名制度・家族登録制度・精密な写真の起用が指紋の代用として新設されている。しかし、これまで長年に亘って強制採取し続けられてきた指紋は今後も保管されていき、つまり指紋の代用といいながら、実は圧倒的な個人情報掌握システムを導入し、外国人のプライバシー管理を一層徹底してきたのである。そして、もう一つの焦点「常時携帯義務」や「違反者への重罰規定」はそのまま継続されている。また、指紋押捺制度の廃止も永住者、特別永住者だけに限られており、それに該当しない在日・滞日外国人らは、従来通り指紋を採取されていく。これらの未解決の状況に対しては、私たち日韓両国の教会が引き続き取り組むべき課題であることを確認した。
1980年代以降の外登法改正運動が目指してきたことは、日本の排外主義を撃ち、地域社会を構成する全ての人が、その人権と人格の尊厳を保障され、共に生きていく社会を実現していくことへの第一歩としての「外登法の抜本的な改正の実現」であった。私たちの運動は、地域社会に暮らす人々が、決して国籍条項で差別されたり分断されたりすることを是とするものではなかったし、これからもそうであり続ける。
今日、日本社会においても韓国社会においても外国人労働者の激増がみられるが、その政治的・経済的背景を顧みる時、両国各々の責任として、それらの外国人の受容と共生とが一層志向されるべきであり、両国内における外国人の基本的人権保障と民族差別の撤廃は必須の課題である。
さらに在日韓国・朝鮮人らの日本在住の歴史的経緯を踏まえつつ、それらの人々が生活上の当然の権利を保障されること、そしてあらゆる全ての在日・滞日外国人と日本人とが地域社会を共に構成し、また共に福祉を享受しあうことを目指すことは、排外的かつ独善的なこれまでの日本社会の体質を脱皮するための不可避の課題であると共に、今後の韓国社会の形成にとっても重要な視点である。
来年1995年は、日本にとっては「敗戦後50年」、そして韓国にとっては「解放後50年」にあたる。私たちは、この歴史的なタイミングを目前にして日韓両国における戦後50年の歴史を振り返るとき、日本においては果たしてそれが「敗戦」すなわち侵略と植民地支配の野心が砕かれその罪が裁かれたという歴史観とその反省と克服とを指向した「戦後」の歴史であったかどうかに深い疑義を見る。と同時に韓国においては果たして真の「解放」を享受し得たのかどうかを問われるのである。日本社会における在日韓国・朝鮮人の苦悩の戦後史や、たとえば日本軍強制「慰安婦」らの永い沈黙の時を破っての告発は、いまだに砕かれず、いまだに悔い改めず、いまだに被害者らを解放させない日本社会の過酷な姿をえぐりだしている。
私たちは、日本社会がこのまま「戦後50年」という時を走り抜けることを決して容認するものではない。現在アジアをはじめ世界中の多くの人々によって求められている「戦争責任の所在と処罰」「現状回復に基づく戦後補償」に日本政府が謙虚に向き合うことを強く要望するとともに、日本社会にあっては加害者としての誠実な告白が、国家レベル・企業レベルのみならず個人レベルでも為されていくために、特に日本の教会は努力するものである。
私たちは、戦後処理の過程で政府が選択した差別・同化・排外主義政策の核心である「外国人登録法」を抜本的に改正することを強く要求する。それとともに、私たちは、今日改めて戦後処理に向き合うべき文脈の中で両国間における強い障壁となっている1965年の「韓日条約」を改めて問い直す必要を合わせて訴える。
「外登令」からサンフランシスコ講和条約を経て韓日条約に至る戦後処理政策には、自らの侵略と植民地政策に対する無反省で排外主義的な姿勢が一貫して横たわっている。私たちは戦後今日に至るまで放置されてきた在日韓国・朝鮮人の人権問題と今日改めて問われている戦後補償・賠償の問題とは、不可分な課題であることを明言しなければならない。
在日韓国・朝鮮人の存在と朝鮮半島の分断の歴史的責任はいずれも日本そして日本人の責任である。両国に存在するこれらの差別・分断状況が解き放たれてこそ初めて日本人の解放が成就することを思うとき、私たち両国のキリスト者は、互いの和解と解放にためにこれからも一層強く結びついていくべきであることをここに言いあらわすものである。
私たちは、今回のシンポジウムにおいて以下の活動計画を相互に確認した。
1.日韓両国が連帯して、日本の外国人登録法の抜本的改正運動に取り組んでいく。韓国教会在日同胞人権宣教協議会の「苦難の現場訪問プログラム」の継続を支援し、日韓両教会の出会いと共同の歴史学習をはかり、連帯関係を強化する。
2.過去3回にわたって開催されてきた「外登法問題国際シンポジウム」の成果の結実として日韓両国で発刊された「日・韓・在日教会共同ブックレット」を用い共通の歴史認識と相互理解を深めることを通して、今後の日韓両教会の協力と連帯の充実と進展を期待する。そのために、「共同ブックレット」の両国の教会内外や教育機関への配布に最大限努力する。
3.指紋押捺拒否を理由に不当な裁判を受けている人々の在留資格その他の権利の即時回復を求め、国会・法務省など関係機関に働きかけるとともに現在闘われている裁判を引き続き支援する。
4.在日韓国・朝鮮人をはじめ日本国内の外国人住民を地域社会の住民と認め、それらの人々の社会参加と政治参加を保障し、「日本国民たる住民」と「外国人住民」が共に生きる地域社会を構築するために必要な措置を取ることを地方自治体に要請する。
5.在日韓国人・朝鮮人としてこれから日本社会で学びゆく在日3世・4世らが、当然の権利として自らの民族教育を選び取り、容易に学習をなすことができるための環境づくりを目指していく。各種学校として認可されている民族学校の助成にも見られる差別的な措置については、文部省や自治体に検討と改善を要求する。
6.日韓両教会が連帯してそれぞれの国における外国人差別に取り組み、その解決を目指していく。特に外国人労働者の人権と擁護の課題に関わり、外国人に開かれた地域社会の形成のために努力する。また日韓両国の教会間で、外国人労働者の人権問題に関するそれぞれの取り組みのケースを交換し、有効な戦術を追求する。
7.日韓両国において、国際人権規約、人種差別撤廃条約、移住労働者の権利条約の完全批准と国内実施措置の確保を求める運動を推進し、外国人住民または民族的マイノリティーに対する国際人権基準についての理解を深める。
8.今日問われているあらゆる戦後補償の問題に関して原告の訴えに傾聴し連帯する。特に強制日本軍「慰安婦」に対する謝罪と賠償について、国家としての責任を明確にし国家賠償をなすべきであることを政府と世論に訴える。韓国挺隊協による国際仲裁裁判所への提訴についてはこれを支持し、日本政府がこれに出廷することを要求していく。また、国際法律家協会(JTC)が、11月22日に発表した“日本軍「慰安婦」”に関する日本政府への勧告を支持し、日本政府がこれを受け入れることを要求する。
9.今後もこのような国際シンポジウムを継続して開催し、両国の教会が上記の課題を共通の取り組みとしながら、日韓そしてアジアにおける宣教のビジョンと各々の役割とを協議し展望する。シンポジウムの開催に関しては、開催場所の広がりや参加者の広がりを検討する。
第5回外登法問題国際シンポジウム共同声明
●1996年10月30日●
私たち日、韓、在日のキリスト者は、1996年10月28日から30日にかけて、第5回外登法問題国際シンポジウムを「『戦後』51年、日本-在日-韓国教会の共同課題」という主題の下、日本、宝塚黙想の家において開催した。
今回のシンポジウムは、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、日本外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会、韓国基督教教会協議会正義と人権委員会、日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会の主催により開催され、韓国教会から14名、在日大韓基督教会から8名を含む65名が参加した。私たちは、日本の外登法抜本的改正のために共に連帯し、運動を担ってきたが、今回これまでの運動の意味を再確認し、新たな運動展開のための方向性を与えられたことを、神に感謝するものである。
昨年の1995年は「戦後50年」という節目の年であった。日本がかつて侵略戦争と植民地支配によってアジア・太平洋地域の諸国に多大な被害を与えた歴史を改めて認識し、日本のキリスト教界もそれに加担した罪責を神と隣人に真摯に告白しなければならない年であった。私たちは戦後補償問題をはじめとする諸課題を、今後具体的、実践的に解決していかなければならないことを確認した。その意味で、「戦後51年」の本年に、外登法問題国際シンポジウムが持たれたことは重要な意義を持つ。
1980年、本格的に開始された指紋押捺拒否闘争は、外登証常時携帯制度の撤廃運動を含めた、80年代外登法抜本改正運動の爆発的展開をもたらした。この運動は、在日韓国・朝鮮人にとっては、日本社会の差別排外主義的構造の中で、民族的主体と自由、人権を回復するものであり、日本人にとっては自らの歴史的罪責を認識し、主体的に自らの差別抑圧構造の変革を促すものであった。また、日本キリスト教史上、初のカトリック、プロテスタント共同による本格的なエキュメニカル運動となり、「宣教課題」として外登法抜本改正運動を位置づけることができた。さらには、今回を含めた5回にわたる国際シンポジウム等の開催により、単なる日本国内の運動にとどまらず、エキュメニカルな国際連帯運動の質をも持ち得たことは特記されるべきである。
外登法抜本改正運動は、運動の力で幾度も「法改正」させてきた。運動によって法律を変えたことのない日本政府をこれほどまでに追い詰めてきたことは、非常に大きな成果として認識されるべきである。しかしながら外登法をめぐる諸課題が解決されてはいないことは言うまでもない。ことに、「外国人の人権を尊重して諸制度の在り方について検討し、その結果に基づいて、この法律の施行後5年を経た後の速やかな時期までに適切な措置を講ずること」と国会で決議された1998年の外登法見直しが近づいている。
今回のシンポジウムでは、主に二つの観点から今後の運動を展望することができた。
第一は、「歴史認識」の共有の問題である。戦後すでに50年を経過したにもかかわらず、日本における歴史教育に決定的な欠落があることは改めて指摘するまでもない。日本の政治指導層の歴史に対する不当な歪曲が、この根本的原因である。例えば、日本政治家の、日本軍強制軍隊「慰安婦」の生を賭した証言を露骨に揶愉する最近の暴言もその一つである。私たちは1965年の日韓条約が、戦後補償問題の障壁となっていることを確認した。日本の国家による公式謝罪と誠実かつ具体的な補償を緊急に実施させなければならない。
私たちの教会は、民衆連帯の立場から正しい歴史認識を共有し、さらには私たちの手による歴史教育のプログラムを創造することが求められている。また日本政府に対し、公教育の場で日韓関係史を正しく教育することを求めていくことを確認した。
第二に、移住労働者問題と外登法抜本改正運動の連関である。今回の国際シンポジウムにおいて、私たちは日韓両国における移住労働者の置かれる現実と教会の課題について認識を深めることができた。私たちの外登法改正運動の一つの帰結点は、「現代社会における普遍的課題としての外国人の人権」という共通理解にある。今日、日本においても韓国においても移住労働者は激増し続けているが、日本での青柳行信さん、金聖基さん、韓国での金海性さん、ヤン・ヘウさんに加えられた不当な弾圧に抗議し、今後、私たちは情報交換を密にしつつ、移住労働者問題に組織的な取り組みを強めることを確認した。
今回の国際シンポジウムでは、これからの私たちの外登法抜本改正運動の方向性について討議された。5回に及ぶ、このシンポジウムの積み重ねの中から大切なヴィジョンが生まれつつある。私たちのこの運動は、究極的には民衆が共に生き、生かし合う「共生社会」をこの地に実現するための闘いである。在日韓国・朝鮮人の人権を常に起点としつつ、今後さらにすべての在日外国人の人権確立のための取り組みへと運動を発展させ、内容を深化させていくことが求められる。
私たちが真に、地の塩、世の光となるために、これからも日・韓・在日の主にある姉妹兄弟は共に歩み、共に祈ることをここに宣言し、以下の活動計画を相互に確認した。
1)日・韓・在日の教会は、今後も外登法抜本改正運動のために協働し、連帯していく。とりわけ「1998年外登法見直し」に向けた取り組みを積極的に行う。
2)日・韓・在日の教会の出会いと共同の歴史学習を深めるための連帯関係をさらに強化する。韓国教会在日同胞人権宣教協議会の「苦難の現場訪問プログラム」の継続を支援し、日本側からの訪韓プログラムの実施する。
3)日・韓・在日教会共同ブックレット「歴史をひらくとき」(韓国版「人さし指の叫び」)が、両国教会内外、教育機関等でより積極的に利用、活用されるように働きかける。またさらに、共同ブックレット続編を編集・発行する。
4)私たちは、日本政府に対し、日本軍強制軍隊「慰安婦」に関して国連人権委員会が決議したクマラスワミ勧告を受け入れることを求める。さらに、すべての戦後補償問題について、日本国家としての歴史的責任を明確にさせ、国家賠償を実現させるための闘いに連帯し、積極的に取り組んでいく。
5)日・韓・在日教会が連帯して、それぞれの国における外国人に対する差別排外主義と闘い、とりわけ移住労働者の人権確立のための取り組みを強める。日韓両国において、国際人権規約、人種差別撤廃条約、移住労働者とその家族の権利条約の完全批准と国内実施を求める運動を推進する。
6)韓国における「外国人労働者保護法」、日本における「外国人人権基本法」の実現に向けて、エキュメニカル・ネットワーク、NGO、市民運動と協働しつつ、あらゆる可能性を追求する。
7)第6回外登法問題国際シンポジウムを、1997年秋、韓国において開催する。
8)上記諸課題を具体的に実践するための「日韓共同運営委員会」を組織し、日・韓・在日教会は同運営委員会に委員を派遣する。同運営委員会は今シンポジウムで確認された共同課題の実現に向けた各種プログラムを設定、実施し、教会内外に対する様々な働きかけを行う。
主なる神は、私たちにこう命じられている。
「寄留者があなたの土地に共に住んでいるなら、彼を虐げてはならない。あなたたちのもとに寄留する者をあなたたちのうちの土地に生まれた者同様に扱い、自分自身のように愛しなさい。」(レビ記19:33,34a)
第6回外登法問題国際シンポジウム共同声明
●1997年10月29日
第6回外登法問題国際シンポジウムは、1997年10月27日から29日まで、韓国釜山のグロリア・コンド・ホテルにおいて、韓国基督教教会協議会正義と人権委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会、日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会の共催により、「解放後(日本敗戦後)半世紀の検証と未来への共同課題」の主題のもとに、韓国教会から55名、在日・日本教会から27名の合計82名が参加して開催した。
参加者は、1990年に開催された第1回国際シンポジウム以来、共生社会実現のために両国において積み重ねられた成果を踏まえ、今日の日韓両国のキリスト者に求められている課題について学び、理解を深めることが出来たことを神に感謝する。
1980年、日本において始まった指紋押捺拒否・外登法抜本改正運動は、これまでに幾度か「改正」を勝ち取ってきた。しかし、私たちが求める共生社会にふさわしい法制度とはかけ離れた管理・抑圧の制度が今なお維持され続けている。それは、1993年に施行されたが、成立にあたって、施行5年の後に見直すことが国会で決議されたことにも表われている。
また、日本における外国人管理の一方の柱である入管法は、1990年、97年と二度の「改悪」によって抑圧と排除の性格を更に強め、移住労働者と、彼ら・彼女らを支援するキリスト者の活動に対しても弾圧の度を強めている。
私たちは「寄留者を虐げてはならない」(申命記10:19)というみ言葉に聞き、両国における寄留者の問題 を宣教の課題とし、さらにその取り組みを強めることを合意した。
私たちは、解放後(日本敗戦後)半世紀を経ても、日韓両国の間で歴史認識を共有できていない現状について論議した。日本社会は今なお、侵略と植民地支配の歴史的事実を認めようとしていない。
日本の植民地支配は、神の祝福のうちに備えられた地上での生命を傷つけ、奪った。私たちは、被害者となった人々の痛みに共感し、共働が必要であることを確認した。特に、日本軍の性奴隷とされた女性たちの叫びにどのように応えることが必要か論議を深めた。また、日本の植民地支配と侵略戦争を常に新たに想起するための礼拝を、両国教会が8月15日に近い主日に持つことが必要であることを論議した。
今年度から使用される日本の中学校教科書では日本軍強制「慰安婦」に関して記述されるようになったが、それに反対し、削除を求める運動が台頭してきた。その背後には自由主義史観を標榜する人々が存在し、彼らの主張を流布する書籍が多数発行されている。これは、かつて日本を侵略と戦争へ駆り立てた、植民地主義、皇国史観が装いを代えて復活してきたものである。私たちは、日韓両国のキリスト者の歴史認識の共有を願って『歴史をひらくとき』(韓国語版『人さし指の叫び』)を発行したが、日本社会の底流にあるこのような歴史認識を克服するために新たなる取り組みを合意した。
これらの認識と論議を踏まえ、私たちは「地の塩、世の光」として、日・韓・在日キリスト者が共同して、以下の課題に取り組むことを確認し、宣言する。
1.日・韓・在日の教会は、「1998年外登法見直し」における取り組みを共同して行なう。
2.韓国における「外国人労働者保護法」、 日本における「外国人住民基本法」の実現に向けて、エキュメニカル・ネットワーク、NGO、市民運動と協働しつつ、あらゆる可能性を追求する。
3.日・韓・在日教会共同ブックレット『歴史をひらくとき』(韓国語版『人さし指の叫び』)が、両国の教会内外、教育機関等でより積極的に利用、活用されるように働きかける。またさらに、共同ブックレット続編を編集・発行する。
4.日・韓・在日の教会の出会いと共同の歴史学習を深めるための連帯関係をさらに強化する。韓国教会在日同胞人権宣教協議会の「苦難の現場訪問プログラム」の継続を支援し、日本側からの訪韓プログラムの実現を図る。その際、若い世代と女性の参加者が与えられ、日・韓・在日相互の出会いの場が広がるように努力する。
5.日本軍強制「慰安婦」問題を含む戦後補償の完全かつ最終的な解決に向けた、特別法の制定運動に積極的に協力する。また、正当な戦後補償を求めている在日韓国・朝鮮人の裁判闘争を支援する。
6.日・韓・在日教会が連帯して、それぞれの国における外国人に対する差別排外主義と闘い、とりわけ移住労働者の人権確立のための取り組みを強める。また、青柳行信さんの裁判闘争を支援する。
7.京都ウトロ地域に歴史的経緯で在住し生活する在日同胞の居住権問題解決のための活動を支援する。
8.日韓両国において、国際人権規約、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約、移住労働者とその家族の権利条約の完全批准と国内実施を求める運動を推進する。
9.上記の諸課題を具体的に実践するための「日韓共同運営委員会」を組織し、日・韓・在日教会は同運営委員会に委員を派遣する。同運営委員会は今シンポジウムで確認された共同課題の実現に向けた各種プログラムを設定、実施し、教会内外に対する様々な働きかけを行なう。
第7回外登法問題国際シンポジウム共同宣言
●1999年6月4日
私たちは、1999年6月2日から4日まで、東京:日野ラ・サール研修所において、「21世紀アジアにおける日本-在日-韓国教会の共同課題」の主題のもと、62人の参加者を得て第7回外登法問題国際シンポジウムを開催した。今回のシンポジウムは、外国人登録法(外登法)・出入国管理及び難民認定法(入管法)の改定案が日本の国会で審議されている中、韓国基督教教会協議会人権委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、韓国天主教人権委員会、外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会(日本)、日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会、難民・移住労働者問題キリスト教連絡会(日本)の6団体によって開催された。
1990年に第1回外登法問題国際シンポジウムを開催して以来10年、私たち日・韓・在日教会は、日本の外登法の抜本的改正を共同テーマとして掲げ、それぞれの教会の課題を確認し続けるとともに、歴史認識の共有、日本の戦争責任の明確化と戦後補償の実現、歴史教育の推進、移住労働者の人権獲得を共同課題に据えて歩んできた。7回を数えるに至ったこの「外登法問題国際シンポジウム」が、日・韓・在日教会の出会いの架け橋として、また対話と共通理解獲得のための貴重な場として今日まで継続されてきたことを、主なる神に感謝する。
1999年3月9日、日本政府は外登法改定案を国会に上程し、参議院は5月21日、一部修正の上で政府案を可決した。
私たちは1980年以来、外登法の抜本的改正を求めてきた。私たちは、外国人管理ではなく外国人の権利を保障する法制度に改めることを主張してきた。しかし今回の改定案は、在日韓国・朝鮮人にとって日常的な監視制度として機能し、常に精神的圧迫となってきた「外登証の常時携帯義務」をそのまま温存した。これは、私たちの当初からの主張も、前回(1992年)の改定に際して付された衆参両議院の決議も、国連の規約人権委員会の2度(1993年、1998年)にわたる廃止勧告も無視したものである。
また入管法改定案においても、新たに「不法残留罪」を設け、「退去強制者の入国拒否期間」を延長するなど、外国人の人権を顧みることのない改悪となっている。私たち日・韓・在日教会は、決してこのような日本政府の改悪案を受け入れることはできない。
期を一にして日本の今国会において「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」関連法案が可決された。これは「平和憲法」を葬り去って戦争参加に法的根拠を与えるものである。加えて今国会では、組織的犯罪対策法の一環として「盗聴法」が可決され、また日の丸・君が代の国旗・国歌法制化や国民総背番号制が画策されるなど、日本は軍国主義化へ突き進もうとしている。戦争は子どもや女性をはじめ、あらゆる人々の生存と人権を破壊するものであり、こうした一連の軍国主義化の流れは、アジア地域全体にとって大いなる脅威となっている。
私たちは、それに抗しうる力を構築しなければならない。その力とは、歴史認識と克服課題を共にする人々が国籍・国境を越えた連帯やネットワークを用いて強固に結びつき、それぞれの地にあってねばり強い運動を展開することである。そして私たちにとってそのことは、日本の軍国主義によって「寄留者」とされ、戦後もなお日本社会の差別・抑圧状況を生き抜いてきた在日韓国・朝鮮人の真の解放のために、日・韓・在日の教会がそれを「使命」として共闘し続けることを、さらに日本国籍/外国籍にかかわらず全ての人々が共に生き・共に生かし合うことのできる社会の創造を、私たち教会の「ビジョン」として掲げて生きることを意味している。
1970年代から今日に至る韓国の民主化運動、そして1980年代、日本における在日韓国・朝鮮人をはじめとする外国人の指紋拒否・人権獲得運動に、私たち日・韓・在日教会は参与し、共に支え合ってきた。
この闘いは、私たちの歩むイエス・キリストの十字架の道において、苦難の歴史に共に参与するものであり、20世紀前半における日・韓・在日の歴史を直視し、真の和解を共に求めるものであった。その闘いと連帯の成果が、20世紀最後の歴史に明確に記されていることを、私たちは確認する。
21世紀を前にして、日本の国家は依然として、20世紀前半における植民地支配の歴史を直視することも、また戦後補償も何一つ行っていない。私たちは、日本の国家責任をあくまで追及し続けていく。
21世紀は今しばらく市場経済至上主義と地域紛争が世界の表面を覆い、そのことによって多くの難民を生み出し、また移住労働者が必然的に増加するであろう。それだからこそ私たちは、すべての人間の生命が国籍の違いによって差別され周辺化されることなく、また一方的に管理されることなく、共に権利を享受し、助け合い支え合って生きていくための社会の創造に向けて一層の取り組みを続けていく。
私たち日・韓・在日教会は、以上の共通認識のもと、以下の課題に取り組むことを確認し、宣言する。
1.1999年、日本の国会において成立しようとしている外登法と入管法の改定案に反対する。「外国人の管理」という法目的を維持し続ける改定案を廃案とし、すべての外国人に「住民」としての地位と権利を保障する抜本改正を早期に図るよう、日本の政府と国会に求める。日・韓・在日教会の緊急課題として、各々の政府と国会に改定案の問題点をアピールすると共に、広く教会内外に訴える。そのために、日韓両国において在日韓国・朝鮮人と移住労働者の人権獲得に取り組むエキュメニカル・ネットワーク、市民運動、NGOと協働する。
2.日韓両国において鄭香均(チョン・ヒャンギュン)さんの東京都庁任用差別裁判を支援すると共に、日本の各自治体における国籍差別撤廃闘争を行なう。
3.日韓両国において、移住労働者の権利保障のため、エキュメニカル・ネットワーク、市民運動、国際的ネットワークと連帯してこの運動に取り組み、また「すべての移住労働者とその家族の権利保護条約」「ILO条約」の批准と完全実施を求める運動を推進する。
4.日韓両国において、国際人権規約、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約等の国際人権条約の完全批准と国内実施を求める運動を推進し、日本において「外国人住民基本法」、韓国において「外国人労働者保護法」の制定に向けて邁進する。
5.日本軍強制「慰安婦」をはじめとするアジア太平洋戦争の犠牲者に対する戦後補償の完全かつ最終的な解決に向けた、「戦後補償法」の制定運動に積極的に協力する。
6.戦争と女性への暴力に関する国連レベルの真摯な検証を支援すると共に、世界の人たちと連帯し、武力による安全保障ではなく人間と人間の信頼による安全保障の確立を希求し、2000年12月に開催される「女性国際戦犯法廷」を積極的に支持する。
7.日・韓・在日教会の出会いと共同の歴史学習を深めるための連帯関係をさらに強化する。韓国教会在日同胞人権宣教協議会の「在日同胞苦難の現場訪問プログラム」の継続を支援し、日本側からの「日韓関係歴史現場訪韓プログラム」の実現を図る。その際、若い世代と女性の参加者が与えられ、日・韓・在日相互の出会いの場が広がるように努力する。
8.21世紀を担う日・韓・在日の若い世代の出会いと交流、真の和解と友情をはぐくむために歴史認識の共有化の共同課題等に取り組む。そのための第一歩として、日本語版『歴史をひらくとき 、韓国語版『人さし指の自由』に続く資料の共同編集を行う。
9.「朝鮮半島有事」などを想定した日本の新ガイドライン関連法案の成立に抗議し、新ガイドラインに基づいた日米のいかなる軍事介入にも日・韓・在日教会は反対する。
10.「日韓共同運営委員会」の場を活用し、上記の共同課題の実現に向けた各種プログラムを設定、実施し、教会内外に対する様々な働きかけを行う。2000年、第8回シンポジウムを韓国において開催する。
第8回外登法問題国際シンポジウム共同宣言
●2000年10月31日●
歴史の転換点ともいうべき2000年秋。私たちは、10月30日~11月1日にかけて、韓国忠清南道牙山において第8回外登法問題国際シンポジウムを開催した。「新ミレニアムを共に生きるアジアのキリスト教界」をテーマに掲げ、70人の参加者が21世紀の日・韓・在日教会の共同課題と連帯の道を求めて協議した。
今回のシンポジウムは、韓国基督教教会協議会人権委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会、外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会(日本)の主催、そして韓国外国人労働者宣教協議会、難民・移住労働者問題キリスト教連絡会(日本)、そしてアジアキリスト教協議会の協力によって開催された。
1990年に第1回外登法問題国際シンポジウムを開催して以来11年、私たち日・韓・在日教会は、日本の外登法の抜本的改正を共同テーマとして掲げつつ、同時にそれぞれの教会の課題を確認し、歴史認識の共有、日本の戦争責任の明確化と戦後補償の実現、歴史教育の推進、移住労働者の人権獲得を共同課題として歩んできた。こうした外登法の抜本的改正を求める国際的な運動の広がりが、今回のテーマに示されているとおり、21世紀の国境を越えた人々の交流と、東アジア、そして世界の「和解」と「共生」へのビジョンに向けて動き始める深まりと広がりを与えられてきたことを神に感謝する。
21世紀を迎えようとする今日、私たちはグローバル市場経済至上主義や地域紛争・民族紛争などの問題に直面し、その結果、私たちの周囲には多くの移住労働者や移住者が生きている現実を見るようになっている。そのような時代にあって、キリスト教界は、民族や国籍によって人と人とが分断されることのない交わりの場、共生の場、礼拝の場となっていく可能性を持たされおり、国家を越えて東北アジア、そしてアジア全域へと広がりゆく平和と共生のための民衆のネットワークを創りあげることを、新たな課題として託されている。そのために、私たちキリスト者一人ひとりが偏狭なナショナリズムや外国人に対する偏見から解放され、共に生き、共に生かしあうしくみを構築しなければならない。
今年6月、朝鮮半島では劇的な「南北首脳会談」が実現し、離散家族の再会、シドニーオリンピック開会式での合同入場、朝米首脳会談など、和解と統一へと向かっている。今日の日朝国交交渉では、1965年の日韓条約と同じく経済的補償によって終えるのではなく、日本の根本的な謝罪と賠償による過去の清算と、在日韓国・朝鮮人の法的地位の確立がなされなければならない。東北アジア、そしてアジア全体の和解と平和の働きのために、日本・韓国・朝鮮民主主義人民共和国等、それぞれの国家との関わりの中で生きる一人ひとりが、過去を直視し克服しながら新たなパートナーとなっていかなければならない。そして、その相互交流と新時代を築く視点や方法の学びの場として、キリスト教界が果たすべき役割は大きい。
しかし、そうした和解と共生の流れに反して、日本では一部の政治的指導者たちの言動に如実に顕われているように偏狭なナショナリズムと有事体制化への傾斜が強まっている。こうした日本の、歴史に逆行する動きを食い止めるためにも、私たちは、日本の過去の侵略戦争の清算、神と歴史と人間に対する真実の悔い改めを、これからの歴史をつくる原点として位置付けていきたい。また韓国では、グローバル市場経済至上主義に同調する一部の保守勢力や悪質なブローカーが、低賃金・劣悪な労働条件の下で、移住労働者たちを、「未登録労働者」「産業研修生」という名目で搾取している現実がある。移住労働者たちの人権を保障する法制度の確立が急務である。
歴史的な時の見極めは重要である。生きて働かれるキリストが、その福音を歴史の中に具現化される時の迫りを受け止めつつ、和解と平和に向けた行動を、私たちは共に決意する。
1.日本において「外国人住民基本法」の制定運動を行い、韓国において外国人労働者の「研修制度」の廃止と、真の雇用許可制の制定に向けて共に邁進する。
2.国連総会で「移住労働者とその家族の権利条約」が決議され、労働条件や医療・教育等での移住先国民との平等や文化的独自性の尊重がうたわれている。日韓両国がこうした世界的な流れを認識し、国際人権規約や子どもの権利条約、人種差別撤廃条約、また移住労働者が享受すべき最低限の取り扱いに関するILOの条約等の国際人権法を完全批准し、実施するよう運動を推進する。
3.移住労働者の権利保障のために協議し、共に働く、アジア全域を結ぶようなキリスト者ネットワークが形成されていく必要がある。私たちはその実現に努力する。
4.日本は今世紀前半、植民地支配と侵略によりアジア諸国の多くの人々に多大な損害と苦痛を与えた。戦後補償を完全かつ最終的に解決するための運動に連帯し、今年12月東京で開催される女性国際戦犯法廷を積極的に支持し、協力する。
5.日本の歴史教科書の歪曲を許さず、日・韓・在日教会の出会いと共同の歴史学習を深めるための連帯を強化する。韓国教会在日同胞人権宣教協議会の「在日同胞苦難の現場訪問プログラム」を継続し、また21世紀を担う日・韓・在日の若い世代の出会い・交流を進め、和解・友情を育むために「日・韓・在日キリスト青年共同研修プログラム」を支援する。
6.「日韓共同運営委員会」の場を活用し、上記の共同課題の実現に向けた各種プログラムを設定し、実施し、教会内外に対する様々な働きかけを行う。2002年、第9回外登法問題国際シンポジウムを日本において開催する。
第9回外登法問題国際シンポジウム共同宣言
●2002年10月24日●
戦争の世紀と呼ばれた20世紀を引き継いで、私たちは、21世紀という新しい歴史に既に踏み入っている。東アジアの緊張した情勢下で、キリスト者の責任は重い。私たち日・韓・在日のキリスト者は、2002年10月21日から24日まで北九州・筑豊の地において第9回外登法問題国際シンポジウムを開催した。今回のテーマは「21世紀東アジアの和解・平和・共生」である。主催者である外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会(外キ協)、日本キリスト教協議会(NCCJ)在日外国人の人権委員会、韓国基督教教会協議会(NCCK)人権委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会は、祈りを一つに合わせ協議を重ねた。
<筑豊からの出発>
私たちは、第9回外登法問題国際シンポジウムを、まず、筑豊の「苦難の現場」研修から開始した。私たちは、この筑豊の地を訪問したことで、東アジアに平和を作りだすためには、国を超えた共通の歴史認識に立つことがいかに重要であるかを改めて教えられた。現場研修を通して、日・韓・在日のキリスト者は、強制連行という日本国家の暴力の前に、名前さえも消されて生命を奪われていった多くの魂の叫び声を共に聴いた。私たちキリスト者は、歴史の事実を隠蔽することなく、神の前において悔い改める必要がある。特に、日本のキリスト者は、植民地支配という近代における大きな罪を具体的に償っていく責任があることを、神の声として強く受け止めた。
<歴史認識の共有>
日本では、「歴史教科書問題」に象徴されるように、日本が植民地下で行なった過ちを隠蔽しようとする動きが大きく拡がってきている。また、小泉首相の靖国神社公式参拝や、「有事法制」を強行採決しようとする動きもある。こうした動きは、日本の軍事大国化の流れを急速に進めるものであり、東アジアの平和を脅かしている。
歴史を学ぶことは、平和の時代を作りだすことであり、私たちは、日・韓・在日の若い世代がそうした歴史認識を共有できる場を積極的に設けていかなくてはならない。
<日朝国交正常化>
私たちは、東アジアの和解と平和の実現を求め、朝鮮半島の和解と平和統一を常に祈り続けてきた。2000年6月には、朝鮮半島において南北共同宣言が出され、南北対立の膠着状態に一条の光明が差し込み、統一への道が開けた。そして今年9月17日、日本の小泉首相が、朝鮮民主主義人民共和国を訪問した。
しかし、朝鮮民主主義人民共和国の金正日総書記が、日本人11名の拉致事実を認め謝罪したことで、日本国内には、朝鮮民主主義人民共和国に対する抗議の声が一挙に拡がった。そのような中で、朝鮮学校に通う子どもたちへの暴力、暴言がおこっている。私たちは、このことを決して許すことは出来ない。
さらに日本政府は、朝鮮民主主義人民共和国に対する戦後補償において、1965年の日韓条約と同様、日本の植民地支配の責任を問わない経済協力という形で解決しようとしている。しかし私たちは、「日本人拉致事件」において、被害者とその家族が納得する真相究明と謝罪がなされなければならないのであり、日朝国交においては、日本がなした植民地支配による歴史事実の徹底究明と国家としての謝罪・賠償がなされなければならない、と考える。
戦後補償裁判の原告をはじめ、戦争犠牲者が相次いで死去している現実を前にして、日本の植民地支配の清算は一刻の猶予も許されない。また日本のマスコミは、植民地時代に行った強制連行・強制労働・性的強制被害の実態、被害者たちの苦難と苦痛を日本社会に知らせなければならない。
<平和を作りだす責任>
日・韓・在日のキリスト者は、これまで以上に国を超えて、この東アジアに安定と平和をもたらすべく、協力しあう時を迎えている。わたしたちは、「平和を作りだす者は幸いである」という御言葉をもとに、主の平和を作りだす責任を負っている。私たちはアジアのキリスト者として、和解と平和と共生のためにさらに強い絆を結び、以下の具体的な共同課題を確認する。
<共同課題>
1.私たちは、すでに日本の国会に上程されている「戦時性的強制被害者問題解決促進法案」「恒久平和調査局設置法案」の早期制定をめざし、国会議員に働きかける。
2.私たちは、日本軍「慰安婦」問題・戦時強制労働問題に関して、日本政府が国連人権委員会とILO基準適用委員会の勧告を履行するよう、世界教会協議会・国際NGO・労働団体などと連帯し、活動する。
3.私たちは、日本の歴史教科書の歪曲を許さず、日・韓・在日の教会の出会いと共同の歴史学習を深めるために、取り組みを強化する。『歴史をひらくとき』(韓国語版『人さし指の自由』)改定版を出版する。
4.私たちは、日韓両国において、多民族・多文化共生社会の実現に向けて、「すべての移住労働者とその家族の権利保護に関する国際条約」を批准し、未登録移住労働者のアムネスティと合法的な在留資格・労働権を付与することをめざす。
5.私たちは、韓国政府に対し、移住労働者に対する強制追放政策を即時中止して、合法的外国人労働者政策を樹立することを求める。日本政府に対し、すべての外国人が、住民としての権利が保障されるよう、「外国人住民基本法」の制定を求める。
6.私たちは、世界経済のグローバル化と相次ぐ戦争によって「生の安全」を脅かされ、故郷を去らざるを得ない人びとに対して、国際人権基準に合致した法制度を早急に整備し、難民として受け入れるよう日韓両政府に求める。
7.私たちは、日・韓・在日キリスト者青年交流プログラムを積極的に協力・支援する。韓国教会の「在日同胞苦難の現場訪問プログラム」を継続する。
8.私たちは、「第10回外登法問題国際シンポジウム」を2003年10月、韓国で開催する。
緊急アピール
9月17日の日朝首脳会談で明らかになった日本人拉致についての内容は、私たちにとって衝撃的なものでした。しかし一方では、それ以降、各地で在日韓国・朝鮮人、とりわけ朝鮮学校に通う子どもたちへの暴行・脅迫などの迫害が急増し、すでに全国で100件以上が報告されています。
これらの暴行・脅迫事件は、朝鮮民主主義人民共和国に対する非難を在日韓国・朝鮮人に向けようとする点で、全く筋違いであるばかりでなく、マイノリティを攻撃の対象にする点でも決して許されるべきものではありません。
日本社会は、1988年の“パチンコ疑惑”、94年の“核開発疑惑”、98年の“ミサイル発射実験”と、日本と朝鮮民主主義人民共和国との関係が悪化するたびに、その潜在的なパニック体質と排外主義を露にしました。すでに日本は人種差別撤廃条約に加入したのにもかかわらず、民族差別禁止法をいまだ制定していません。このような中で再び今回、同じような人権侵害事件を引き起こされています。しかも、“日本の国民感情”という使い古された言説によってナショナリズムを煽り、日本が果たすべき歴史責任も、在日韓国・朝鮮人への暴行・脅迫事件も、今や後景に追いやられてしまっています。
私たちは、こうした在日韓国・朝鮮人への迫害事件が繰り返し発生していることに強く抗議します。
2002年10月24日 第9回外登法問題国際シンポジウム参加者一同
外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会
日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会
韓国基督教教会協議会人権委員会
韓国教会在日同胞人権宣教協議会
第10回外登法問題国際シンポジウム共同宣言
●2003年10月22日●
私たち韓国・日本・在日のキリスト者は、2003年10月20日から22日にわたり、韓国雪岳山において、「日本の歴史責任と東アジアの和解・平和・共生」の主題の下、第10回外登法問題国際シンポジウムを開催した。
韓国基督教教会協議会(NCCK)人権委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会(外キ協)、日本キリスト教協議会(NCCJ)在日外国人の人権委員会が主催するこのシンポジウムが今回、韓国・日本・在日教会の祈りと支えによって第10回を迎えたことを、神に深く感謝する。
私たちは、この東アジアにおいて和解を阻み、私たち民衆の生を脅かす、過酷な現実を直視する。私たちは、祈りをもって真剣な協議を重ねることにより、さまざまな困難に屈せず、忍耐強く「神の国の平和」を実現するために、共に歩み続けることを確認する。
<平和を創り出す責任>
21世紀の世界と東アジアは、平和を阻害する多くの問題に満ちている。
2001年9・11以降、「テロ撲滅」を名目とする米国を中心とした多国籍軍によるアフガニスタン、イラクへの軍事攻撃は、多くの生命を奪い、民衆の生活基盤を根こそぎ破壊した。
2002年9月17日の日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との首脳会談で明らかになった日本人拉致事件をめぐって、日朝国交交渉が膠着状態に陥っている。さらに北朝鮮の核兵器開発をめぐる米国と北朝鮮との対立は、2002年10月以降再び先鋭化し、一触即発の状況にある。米国の一極軍事体制化の下、韓国はイラクに派兵し、日本では今夏、「有事法制関連法」「テロ特措法」「イラク特措法」など、自衛隊の海外派兵・軍事大国化につながる法案が矢継ぎ早に国会で成立した。
このことは、東アジアに住む私たちに対して、「予見される危機を眺める知的・現実的無力感」から脱して、主イエスの名に基づく真の平和を創り出す責務を課している。私たちは日本の軍事化、韓国の海外派兵に反対し、東アジア平和共同体、東アジア人権共同体を創り出すために、共同して活動していくことを確認する。
<排外主義の嵐>
いま日本では、自民族中心主義・排外主義による国家主義が公然と台頭している。
昨年9・17以降、在日韓国・朝鮮人に対してさまざな暴力が加えられている。民族学校に通う在日四世・五世の子どもたちに、「朝鮮へ帰れ」「おまえらを拉致するぞ」という暴言が吐きかけられ、通学服のチマチョゴリが切られるという暴力事件が続いている。
5月31日、麻生太郎・自民党政調会長は、講演の中で「創氏改名は、朝鮮人が名字をくれと望んだのが始まりだ」と述べた。また、江藤隆美・元総務長官は7月12日、「韓国併合は、両国が調印して国連が無条件で承認した」「朝鮮半島に事が起こったら、船で何千、何万人と押し寄せる。国内には不法滞在者など、泥棒や人殺しをしているやつらが百万人もいて、内部で争乱を起こす」などと放言した。さらに石原慎太郎・東京都知事は9月10日、街頭演説で、外務省高官宅へのテロ未発事件について「爆弾が仕掛けられて当たり前の話だ」と、テロを扇動する発言をした。しかも彼らは、これらの暴言を撤回し謝罪しようともしていない。
そして、民族差別を助長し、テロを容認するこうした発言に対し、日本の国会も世論も彼らを弾劾し免職することもできず、放置している。問題を的確に報じようとしないマスコミの責任は重大である。
〈日本の歴史責任〉
今年9月1日、関東大震災から80年を迎えた。1923年、この大災害直後に起こった虐殺事件で犠牲となった朝鮮人は、6000人以上に上った。日本弁護士連合会は8月25日、「国は、軍隊による虐殺の被害者、遺族に対し、また虚偽事実の伝達など国の行為に誘発された自警団による虐殺の被害者、遺族に対し、その責任を認めて謝罪すべきである」「国は、朝鮮人・中国人虐殺の全貌と真相を調査し、その原因を明らかにすべきである」と勧告した。
また現在、中国では旧日本軍が遺棄した化学兵器による毒ガス被害も発生しており、戦後処理がまだ終わっていないことを示している。
今年3月、日本の最高裁において関釜裁判、宋神道裁判など6件の戦後補償裁判が上告棄却という形で原告の主張が斥けられた。日本軍性暴力被害者を原告とする一連の裁判に不当な判断をくだした日本の司法に対して、私たちは怒りを持って抗議する。私たちは、日本政府が朝鮮半島をはじめとするアジアへの歴史責任を明確にし、「戦時性的強制被害者問題解決促進法案」「恒久平和調査局設置法案」の早期制定を求める。
私たちは、これまで一貫して日本のアジア諸国に対する国家としての謝罪と補償なしに平和な未来を構築することはできない、と訴えてきた。しかし、9・17日朝首脳会談以降、日本では歴史責任を棚上げにして、「拉致問題」だけが取り上げられ、北朝鮮バッシングが続いている。
〈人権保障制度の確立〉
私たちは、韓国において「国家人権委員会」が発足したことをアジアにおける画期的な人権推進の出来事として評価し、日本においても同様の人権機関が設置されることを求める。
韓国では今年7月、製造業・サービス業など外国人に合法的な在留資格と労働3権を認める「外国人労働者雇用法」が成立したが、産業研修生制度の廃止と未登録移住労働者の全面合法化は未解決の課題としてある。日本では外国人は210万人(外国人登録者185万、未登録者25万)以上にのぼり、「住民」としての地位と権利を保障する法制度が確立されなければならない。
今年7月に国際人権条約として発効した「移住労働者とその家族の権利保護条約」は、移住労働者の権利を総括的に保障するものであり、市場経済至上主義の支配する時代の中にあって、とりわけ移住労働者受け入れ国である日韓両国は批准を急がなければならない。
〈私たちの決意〉
私たちは、人権を守る闘いにおいて、日・韓・在日教会の協力と連帯が重要度を増していることを自覚し、以下のことを共同課題として確認する。
1.私たちは、戦後日本が朝鮮半島の南北分断の受益国としてあったことも含めて、植民地支配の歴史責任を、いまだ果たしていないと考える。したがって、私たちは日本政府に対して、ただちに無条件で日朝交渉を再開すること、在日韓国・朝鮮人に対する差別政策・人権弾圧を中止することを求める。
2.私たちは、日韓両政府に対し、多民族・多文化共生社会の実現に向けて、「すべての移住労働者とその家族の権利保護条約」を批准し、未登録移住労働者の合法化と、難民申請者の在留資格付与、外国人研修制度の廃止を求める。
3.私たちは日本政府に対して、国際人権条約に基づく「人種差別(民族差別)禁止法」の制定および政府行政機関から独立した「人権委員会」の創設と、「外国人住民基本法」の制定を求める。また韓国政府に対して、「差別禁止法」の制定を求める。
4.私たちは、日本政府に対して、在日韓国・朝鮮人など旧植民地出身者とその子孫に対して、日本の歴史責任を明記し、民族的マイノリティとしての地位と権利を保障する「在日基本法」の制定を求める。
5.私たちは、日本の歴史教科書の歪曲を許さず、日・韓・在日教会がその出会いと学びをさらに深めるよう歴史学習への取り組みを強化する。その一環として『歴史をひらくとき』(韓国語版『人さし指の自由』)改定版を出版するとともに、「日・韓・在日キリスト青年共同研修プログラム」を積極的に支援する。
6. 私たちは、韓国教会の「在日同胞苦難の現場訪問プログラム」を継続すると共に、日本・在日教会の「歴史現場訪問プログラム」を開始する。また、「第11回外登法問題国際シンポジウム」を2005年、日本で開催する。
2003年10月22日 第10回外登法問題国際シンポジウム参加者一同
韓国基督教教会協議会人権委員会
韓国教会在日同胞人権宣教協議会
外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会
日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会
第11回外登法問題国際シンポジウム共同宣言
●2005年6月22日●
「戦後=解放後60年、日韓国交から40年――21世紀東アジアの和解と共生」という主題の下、私たちは、2005年6月20日から22日にわたり、北海道夕張においてシンポジウムを開催した。
「竹島=独島問題」や「日本の歴史教科書問題」「靖国問題」など、日本と韓国・アジアとの問題が再浮上するなかで、私たちの呼びかけに応じ、日本・在日・韓国教会から多くの代表者が参加した。今回参加者は、シンポジウムに先立ち、朝鮮人強制連行・強制労働の歴史現場である夕張炭鉱を訪問し、「苦難の歴史」を心に刻んだ。そして祈りを共にして、真摯に協議し、和解と共生を目指してともに歩むことを確認できたことを、神様に深く感謝する。
今年2005年は、1905年「乙巳条約」、すなわち日本による朝鮮半島の実質的な植民地支配から100年目、日本の敗戦=朝鮮半島の解放から60年目となる。しかし日本は、その歴史的責任をはたしていない。
韓国では今年1月、1951年から14年間に及んだ韓日国交交渉の記録文書の一部を公開した。さらに2月には、「日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会」を設けて、市民からの調査依頼を受け付け、その数はすでに20万件にのぼろうとしている。一方、日本政府は、朝鮮半島出身者徴用者の名簿や遺骨返還など、「形だけの実態調査」をしただけである。
このような韓国政府と日本政府との大きな隔たりは、1965年の日韓条約に起因する。それから40年後の今日、日本-在日-韓国の和解と友好を実現するためには、1905年から1945年に至る日本の植民地支配(強制占領)実態の究明が必要である。まずそのためには、日本側の資料の公開が何よりも求められている。そして究明された「真相」に基づいて、謝罪し、補償すべきである。それは、植民地支配という人類の恥ずべき歴史を克服する貴重な営みなのである。
日本が韓国・朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)や、中国・台湾などのアジアの人々と和解と信頼を結ぶためには、誠実な謝罪と個人補償を行い、歴史に誠実に向き合うことが必要である。
私たちは三日間にわたる協議を通して、日本・在日・韓国教会の連帯の闘いがますます必要であり重要であることを確認した。その闘いは、地域社会、国家、そして国家を超えた共同体の安定と平和によって人間の尊厳が守られることを願い、「正義を行い、誠実に愛し、神と共に謙虚に歩む」(ミカ書6:8)キリスト者の祈りであり、生き方であることを確信し、以下のことを私たちの共同課題として取り組むことを表明する。
1.私たちは、日韓両政府に対して、日韓国交交渉の記録文書を全面的に公開することを求める。とりわけ日本政府・自治体・企業が所有している植民地支配関連資料を公開することを強く求める。
2.私たちは、日韓両政府に対して、日本の歴史責任を明記し、「日本軍慰安婦」、強制連行・強制労働などに対する戦後補償の実施、歴史認識の共有作業などを定めた新しい日韓協定を結ぶよう求める。
3.私たちは日本政府に対して、日朝国交正常化交渉をただちに再開し、歴史の真の清算と和解に導く日朝条約を結ぶよう求める。
4.私たちは日韓両政府に対して、「すべての移住労働者とその家族の権利保護条約」の批准、未登録移住労働者の合法化、難民申請者の在留資格付与、外国人研修制度の廃止を求める。
5.私たちは日韓両政府に対し、多民族・多文化共生社会の実現に向けて、定住外国人の地方参政権を実現するよう求める。
6.私たちは日本政府に対して、「外国人住民基本法」と「人種差別(民族差別)禁止法」の制定、政府行政機関から独立した「人権委員会」の創設を求める。
7.私たちは、日本政府に対して、在日韓国・朝鮮人など旧植民地出身者とその子孫に対する「在日人権基本法」の制定を求める。そこでは、日本の歴史責任が明記され、国際人権条約が定める民族的マイノリティとしての地位と権利が保障されなくてはならない。
8.私たちは、日本の歴史教科書の歪曲を許さず、日本・在日・韓国教会が歴史認識の共有をめざしてさまざまな共同プログラムを推進する。その一つとして『歴史をひらくとき』(韓国語版『人差し指の自由』)新版を出版する。
9.1970年代から始まる韓国民主化運動と、それに対する日本・在日教会の支援運動、そして1980年代から始まる日本・在日教会の外登法改正運動と、それに対する韓国教会の支援運動、これらの日本・在日・韓国教会の連帯の闘いを、若い世代と共に継承し発展させていく。その一つとして、「日・韓・在日キリスト青年共同研修プログラム」を積極的に支援していく。
10.私たちは、日本の右傾化・軍事化を憂慮し、平和のための共同祈祷日を設ける。また韓国・在日・日本教会の「歴史現場訪問プログラム」を継続すると共に、「第12回外登法問題国際シンポジウム」を2006年、韓国で開催する。
2005年6月22日 第11回外登法問題国際シンポジウム参加者一同
外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会
日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会
韓国基督教教会協議会人権委員会
韓国教会在日同胞人権宣教協議会
韓国カトリック司教協議会正義と平和委員会
第12回外登法問題国際シンポジウム共同宣言
●2006年10月12日●
私たちは、第12回外登法問題国際シンポジウムを「東アジアの『和解』と『共生』」との主題のもと、2006年10月10日から12日にかけて韓国忠清北道清原郡において開催した。
韓国基督教教会協議会人権委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会、外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会が主催したシンポジウムには、韓国、日本、在日の教会から70名が参加し、歴史の主なる神の導きのもと、歴史や聖書、市民運動や個人の体験に聴きつつ、神から私たちに与えられている使命と課題を確認するために討議を行った。
韓国では今年5月、永住資格を持って3年以上居住する19歳以上の外国人の地方選挙権が実現した。これは、資格条件の緩和など改善されるべき課題を残しつつも、アジアでは初のことであり、韓国内だけではなく、日本に住む外国人にとっても大きな励ましとなる出来事であった。一方、日本では、在日外国人への地方参政権付与は、未だ実現していない。そればかりか、在日外国人の管理のための法制度が強化されている。
その象徴は、今年5月に改定された出入国管理及び難民認定法(入管法)である。改定入管法では、「テロ」の未然防止を理由に、16歳以上の外国人(特別永住者や外交官などは除く)は、日本への入国・再入国の際に、指紋と顔写真を登録することが義務付けられた。また、採取したデータを長期間保存し、「テロリスト」の入国防止以外の目的にも使用できるようにした。長い間の市民運動と国際連帯によって外国人登録法における指紋押捺制度が2000年に全廃されたが、改定入管法は、それを再び復活させることを通して、外国人への差別・偏見を助長し、特別永住者と一般永住者との家族や、日本人と外国人との家族を分断させるものであり、私たちは今回の改悪をとうてい容認することはできない。
私たちは、このシンポジウム開催に向けて準備をしていた直前の10月9日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が「地下核実験を行ったと発表した」という報道に接し、驚くと同時に大きな失望と困惑を覚えた。このことは、国際社会の長年の核軍縮への努力と、非戦・非核の平和運動に水をさすものである。私たちは、いかなる国であれ、一般民衆の生命と生活の安寧を願う政府であれば、核兵器開発に手を染めてはならないと考える。しかし、数十年にわたる北朝鮮に対する持続的な経済制裁と軍事的な脅威があったということを見逃してはならない。今は、さらなる対話と説得をもって、賢明な解決が必要な時である。
現在、日本では、新たに就任した安倍首相は、教育基本法および憲法などを改悪することを通して、日本を強力な軍事力をもつ国家とし、その国家に従う国民作りを進めている。日本のこのような方向は、東アジアにおける不安定要素を高めると共に、偏狭なナショナリズムを高揚させ、在日外国人に対する排外主義を強めるものである。
私たちは、日本政府が在日韓国・朝鮮人など在日外国人への差別制度を維持し、過去の過ちを繰り返そうとしている原因の一つは、過去の清算が真摯に行われていないことにあると考える。
韓国では、さまざまな市民団体が、過去の公権力による犯罪の真相究明など過去清算を求める運動を展開し、相当の成果を挙げている。それらの運動は、公権力により人権を侵害された人びとの名誉を回復すると共に、その再発を防止し、さらには民主主義を堅固なものとするためのものである。
一方、日本では、日本軍「慰安婦」や強制連行・強制労働関係の戦後補償裁判において原告が敗訴していることや、その立法化がなされていないことに象徴されるように、過去の清算は進んでいない。
このような中で、とくに日本の教会は、自らの過去において国策を擁護し戦争協力を行ったことを改めて心に刻む必要がある。戦前、日曜学校運動においても天皇制を積極的に擁護しつつ、アジア蔑視と軍国主義教育、そして、国家に従順な国民作りを推進してきた。その反省に立ち、日本の教会は、韓国の市民運動や教会に学び連帯しつつ、戦後補償問題など日本の過去を清算するための運動を展開し、日本を真の民主主義国家にする使命をもっている。
多くの人たちが世界的に行き来する時代にあって、私たちが目指すべき社会は、多民族・多文化の共生社会である。そのため、国籍に関係なく、社会に参加する「市民」という観点から、「外国人-国民」という二分法的思考から脱却する必要がある。そのために、日本ではまず、すべての人が共に生きる存在として自らの意見を反映する制度である地方参政権が認められるべきである。
私たちは、外国人と内国人との区別がなく、共に生きるすべての人びとに公平な待遇をすることが聖書の精神であることを知っている。また福音書において、主イエスは、隣人に対する警戒を解き、それを克服することが大切であると教えている。主イエスに従う私たちは、すべての人にとって住みやすい社会の実現にむけて、次の共同課題に取り組むことを表明する。
◆日・韓・在日教会の共同課題
1.私たちは、日本がかつて行った侵略と植民地支配・帝国主義戦争を復活させようとする、日本首相の靖国神社参拝と教育基本法および平和憲法の改悪に強く反対する。
2.私たちは日本政府に対して、外国人指紋制度を復活した入管法の改悪に強く抗議し、来年に予定されている外国人指紋・顔写真登録の実施を中止するよう求める。
3.韓国政府は昨年1月と8月、韓日国交交渉(1951~65年)に関する記録文書をすべて公開した。私たちは日本政府に対して、日韓国交交渉の関係文書を全面的に公開することを求める。とりわけ日本政府・自治体・企業が所有している植民地支配関連資料を公開することを強く求める。このことは、今後の日韓関係の発展のために、また日朝国交においても必要なことである。
4.私たちは日韓両政府に対して、日本の歴史責任を明記し、日本軍「慰安婦」、強制連行・強制労働などに対する戦後補償の実施、歴史認識の共有作業などを定めた新しい日韓協定を結ぶよう求める。
5.私たちは、韓国と北朝鮮が1992年の南北基本合意書第6次会談で合意した「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」を想起し、北朝鮮に核兵器開発の中止を求める。また同時に、民族分断の克服と東アジアの平和構築のために、米国や日本などに北朝鮮敵視政策の撤回を求める。
6.私たちは日本政府に対して、「非核三原則」の堅持をあらためて表明すると共に、日朝国交正常化交渉をただちに再開し、歴史の真の清算と和解、東アジアを平和に導く日朝条約を結ぶよう求める。
7.私たちは日韓両政府に対して、「すべての移住労働者とその家族の権利保護条約」の批准、未登録移住労働者の合法化、難民申請者の在留資格付与を求めると共に、日本政府は外国人研修制度を廃止し、韓国政府は産業研修制度を通して利益を得ている集団に雇用許可制度の労働管理を委ねることを撤回するよう求める。
8.私たちは日本政府・国会に対して、定住外国人の地方参政権を実現するよう求める。
9.私たちは日本政府・国会に対して、「外国人住民基本法」と「人種差別(民族差別)禁止法」の制定、政府行政機関から独立した「人権委員会」の創設を求める。
10.私たちは日本政府・国会に対して、在日韓国・朝鮮人など旧植民地出身者とその子孫に対する「在日人権基本法」の制定を求める。そこでは、日本の歴史責任が明記され、国際人権条約が定める民族的マイノリティとしての地位と権利が保障されなくてはならない。
11. いま世界において「テロ対策」の名のもとに外国人・民族的少数者への監視・弾圧体制が強化され、人権侵害にさらされていることに対して、私たちは教会の世界的ネットワークを活かして外国人・民族的少数者の人権獲得運動を展開していく。
12.私たちは、日本の歴史教科書の歪曲を許さず、日本・在日・韓国教会の歴史認識の共有をめざして、共同プログラムを推進する。その一つとして『歴史をひらくとき』(韓国語版『人差し指の自由』)新版を来年出版する。また、韓国・在日・日本教会の「歴史現場訪問プログラム」を継続する。
13.1970年代から始まる韓国民主化運動とそれに対する日本・在日教会の支援運動、1980年代から始まる日本・在日教会の外登法改正運動とそれに対する韓国教会の支援運動、これらの日本・在日・韓国教会の連帯の闘いを、私たちは若い世代に継承し発展させていく。その一つとして、「日・韓・在日キリスト青年共同プログラム」を積極的に支援する。
14.私たちは、「第13回外登法問題国際シンポジウム」を2008年、日本で開催する。
2006年10月12日
第12回外登法問題国際シンポジウム 参加者一同
韓国基督教教会協議会人権委員会
韓国教会在日同胞人権宣教協議会
韓国カトリック司教協議会正義と平和委員会
日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会
外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会
第13回外登法問題国際シンポジウム共同宣言
●2008年7月1日●
私たちは、6月30日~7月2日、第13回外登法問題国際シンポジウムを、主題「東アジアの和解と共生のビジョン――日・韓・在日教会の共同課題」のもと、愛知県犬山市において開催した。
韓国基督教教会協議会正義と平和委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、韓国カトリック司教会議正義と平和委員会、日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会、外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会が共催した国際シンポジウムには、韓国、日本、在日の教会から55名の参加があった。
私たちは、反外登法の運動を展開する中で、在日韓国・朝鮮人の解放のための活動を教会の使命として担うことを目的に国際シンポジウムを1990年に開始して以来、人びとが共に生き、共に生かし合う社会の実現を目指してきた。そして、今回のシンポジウムでは、日韓の両社会がグローバリゼーションにより急速に「多民族・多文化」化する中での教会の使命と役割について、主題講演と聖書研究、事例報告、発題を受け、協議した。
今回のシンポジウムに参加する前、韓国側参加者の1名が名古屋中部国際空港で数時間にわたり厳しい取り調べを受け、残りの16名は不当にも拘束された。韓国側参加者たちは、入管当局の責任者に抗議をし、謝罪を求めた。私たちは、今回の韓国側参加者の抗議に全面的に賛同し連帯すると共に、全世界の民衆に苦難を与える新自由主義グローバリゼーションに対する反対の意思表明をこのような形で押さえつけようとする日本政府の姿勢に改めて憤りを覚える。
今日において世界を席巻している経済グローバリゼーションは、多くの「隔ての壁」や痛みをもたらしている。規制緩和を唱える新自由主義イデオロギーのもと、人が人らしく生きるために必要な社会福祉や医療などの分野に市場原理が導入され、社会的な弱者が切り捨てられつつある。労働市場における規制緩和によって非正規雇用が大幅に増える中で、経済的格差や貧困、不平等が広がりつつあり、多くの人びとの不安が増大している。この不安の増大は、特に日本では排他的なナショナリズムを生み出す温床ともなっている。
また、経済グローバリゼーションは、平和の問題とも大きく関わっている。経済グローバリゼーションが進む中、海外進出した日本の多国籍企業の海外資産の保全のために、米国と連動した海外における日本の軍事的プレゼンスへの道が開かれようとしている。「戦争ができる国家」つくりのための平和憲法改定の動きなどもその流れの一環である。また、この動きを正当化するため、「テロ」対策という大義名分が利用されているが、それは外国人管理の強化を進める際にも利用されている。「テロ」対策の名のもとに改定された出入国管理及び難民認定法(入管法)における指紋押捺制度の復活をはじめ、外国人管理に関する法制度を強化することを通して、在日外国人の監視・管理体制が構築されつつある。これは、日本国籍者に対する監視・管理をも視野に入れたものである。
一方、人口の減少による労働力不足を踏まえての「移民開国論」が「多文化共生」を掲げつつ政財界から唱えられているが、これは、移住者の人権への視点を欠いており、日本の産業を支える非正規の低賃金労働力の確保を覆い隠すためのカモフラージュであると言える。
韓国においても、移住民をめぐって多くの課題が現存する。その中で私たちは、日韓両国における移住民の子どもたちの置かれている状況に注目した。グローバリゼーションのしわ寄せは、弱い立場にいる移民者の子どもたちにも及んでいる。無国籍、アイデンティティ・クライシス、不就学という、子どもたちが置かれている状況は早急に改善されねばならない。
私たちが求める多文化共生とは、声を失いかけるほどに小さくされた者の声が響きあう共生の空間を広げることである。これは、私たちに与えられている宣教の使命である。私たちは、イエス・キリストが新自由主義経済のもとで苦しむ民衆と共に臨在されていると信じる。
制度的な同化と排外を内在した官製の多文化共生とは違った共生空間を切り拓くためには、私たちは「国民-外国人」という枠組みを克服し、共感し、出会う場をつくっていかなければならない。そのために、外国人を地域社会を共に形成する住民と見なす中で、相互に協力しつつ、共に生きていく「地域住民文化」を形成する地域住民レベルの運動が必要とされている。また、そのような運動に参与するため、イエス・キリストを頭とする教会は、自らのために生きるのではなく、多文化地域社会に仕える社会的な責任を負った共同体にならなければならない。
私たちが担うべき課題はあまりに大きく、重いように思われる。しかし、私たちは諦めない。もし私たちが希望を失い、私たちのいのちを動かすバイタリティーを失うなら、私たちは存在への勇気と、逆境の中にあっても私たちを前進させる力を与えてくださる聖霊の導きを見失うからである。このような決意を心に刻みつつ、私たちは次の共同課題に取り組むことを表明する。
日・韓・在日教会の共同課題
1.私たちは、新自由主義のもとにあるグローバリゼーションの中で、多国籍企業の保全と米国の世界戦略のための戦争の道を「世界平和を守る国際貢献」の美名のもとに復活させようとする、平和憲法の改悪の動きに反対する。
2.私たちは、世界において「テロ対策」の名のもとに外国人およびマイノリティへの監視・弾圧が強化され、人権侵害にさらされていることに対して、教会の世界的ネットワークを活かして反対の運動を展開する。その一環として、日本入国における抗議意思の表明など、改定入管法による指紋・顔写真などの生体情報の管理制度撤廃に向けての運動を展開する。
3.私たちは日韓両政府に対して、日本の歴史責任を明記し、日本軍「慰安婦」、強制連行・強制労働などに対する戦後補償の実施、歴史認識の共有作業などを定めた新しい日韓協定を早急に結ぶよう求める。
4.私たちは、「在日韓国・朝鮮人の歴史性を反映した、民族的マイノリティとしての地位と権利の保障」「移住労働者・結婚移民者・難民の人権保障」を、教会の宣教課題として取り組む。
5.私たちは日韓政府に対して、「すべての移住労働者とその家族の権利保護条約」の批准、未登録移住労働者の合法化、難民申請者の在留資格付与を求める。
6.私たちは日本政府・国会に対して、定住外国人の地方参政権を実現するように求める。
7.私たちは日本政府・国会に対して、「外国人住民基本法」と「人種差別(民族差別)禁止法」の制定、政府行政機関から独立した「人権委員会」の創設を求める。
8.私たちは、今年作成された共同ブックレット『歴史をひらくとき-共に生きる世界・2008』を活用する。韓国においてはその文脈に合わせた翻訳版を2009年中に作成する。
9.私たちは、韓国教会「在日同胞苦難の現場訪問」を、今後も継続する。
10.私たちは、若い世代の交流とネットワークの形成や、共生社会実現のビジョンを描く人を養成するために、「多民族・多文化共生キリスト者青年」現場研修を今年から5年計画のプログラムとして開始する。
11.私たちは、世界的な市民権、多文化共生社会、移住民の神学などの研究・促進のために研究チームをつくり、交流する。
12.私たちは、それぞれが直面している課題を共有し、東アジアの和解と共生という日・韓・在日3教会の共同課題を協議し実践するために、今後も国際シンポジウムを継続する。次回は、2009年6月末に韓国光州で開催する。
2008年7月1日
第13回外登法問題国際シンポジウム 参加者一同
外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会
日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会
韓国基督教教会協議会正義と平和委員会
韓国教会在日同胞人権宣教協議会
韓国カトリック司教会議正義と平和委員会
抗 議 文
下関市長 江島 潔 様
下関市教育長 嶋倉 剛 様
私たちは、「東アジアの和解と共生のビジョン――日・韓・在日教会の共同課題」というテーマのもとに愛知県犬山市に参集して第13回外登法問題国際シンポジウムを開催しました。この協議会には韓国から韓国基督教教会協議会正義と平和委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、韓国カトリック司教協議会正義と平和委員会、日本から外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会、日本キリスト教協議会外国人の人権委員会が参加しております。
下関市教育長が6月26日、山口朝鮮初中級学校への教育補助金増額を求めて訪問した同校関係者に対して「植民地支配は歴史的事実に反する」と発言した、という報道に接し、私たちは怒りを禁じ得ないと共に、強く抗議いたします。
日本が1910年から1945年の敗戦にいたるまで朝鮮半島を植民地支配したことは、歴史的事実であり、教科書でも明記され、歴代首相も、朝鮮半島の植民地支配に対する反省と謝罪の意を繰り返し表明しています。こうした事実にもかかわらず、嶋倉教育長は、自らの事実認識の誤りを認めておられません。教育行政の責任ある立場にある人としてあるまじき行為です。
嶋倉教育長はただちに発言の誤りを認め、辞任すること、また江島下関市長は、任命権者としての責任を取られることを、私たちはを強く要求いたします。
2008年7月1日
第13回外登法問題国際シンポジウム参加者一同
名古屋中部国際空港拘束事件に対する抗議声明
私たちは、2008年6月30日から7月2日まで、第13回外登法問題国際シンポジウムを、主題「東アジアの和解と共生のビジョン――日・韓・在日教会の共同課題」のもと、愛知県犬山市において開催した。
韓国基督教教会協議会正義と平和委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、韓国カトリック司教会議正義と平和委員会、日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会、外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会が共催した国際シンポジウムには、韓国、日本、在日の教会から55名の参加があった。
私たちは、反外登法の運動を展開する中で、在日韓国・朝鮮人の解放のための活動を教会の使命として担うことを目的に国際シンポジウムを1990年に開始して以来、人びとが共に生き、共に生かし合う社会の実現を目指してきた。そして、今回のシンポジウムでは、日韓の両社会がグローバリゼーションにより急速に「多民族・多文化」化する中での教会の使命と役割について、主題講演と聖書研究、事例報告、発題を受け、協議した。
今回のシンポジウムに参加する前、2008年6月30日午前11時に名古屋中部国際空港に到着した韓国側の参加者は、名古屋中部国際空港で数時間もの間、不当にも厳しい調査を受け拘束された。韓国側参加者は出入国管理局の責任者に対し抗議して公式の謝罪を要求したが、公式の謝罪はなされなかった。その結果、公式的な国際シンポジウムである本会議に遅れや行き違いが生じた。私たちは、韓国側の参加者が空港で行った抗議に全面的に賛同し連帯するのみならず、日本政府に対して怒りを感じる。以下に私たちの立場を表明する。
(1)4時間もの間、韓国側参加者は拘束されたのだが、拘束されている理由を私たちが尋ねても、当局はその理由を全く明らかにしなかった。これは、身体の自由を長時間、束縛しながら、一言も説明しなかったということであり、公権力を行使した人権侵害である。
(2)4時間もの間、狭いバイオ検査室に拘束され閉じこめられた。ここは、入国者が伝染病などに感染していないかを検査する場所であり、入り口がふさがれておらず、部屋の外を通り過ぎる人が部屋の中を覗き見ることができるようになっている。英語の分からない多くの人たちは、部屋を覗き見ながら笑いながら通り過ぎていった。拘束されていた者が、まるで犯罪者であるかのように外部に映った。
(3)昼食の時間が過ぎても食事とお茶など飲み物を与えず、緊張と不安を引き起こすなど、外国人に対する差別と人間の普遍的な権利に対する侵害を躊躇なく行ったと私たちは理解する。
(4)一行の中の女性1名のカトリック教会の修道女を2時間ほど集中的に調査するなど精神的な苦痛を与えた行為と、それにより理由も知らされないままバイオ検査室にいた他の者たちに対して不安感を引き起こしたことは、一般的な常識を越えた公権力の濫用であったと言わざるをえない。
(5)責任者との面会と謝罪を要求する正当な行為に対しても、責任者である所長との面会さえ許可されず、むしろ、通常なら90日である在留期間を15日に短縮した担当者の決定は、公権力による外国人の旅行の自由の制限であると言わざるをえない。
これに対し、私たちは次のように要求する。
(1)日本国法務大臣は、第13回外登法問題国際シンポジウムの主催者側と韓国人参加者たちに対し、公式に謝罪せよ。
(2)法務大臣は、名古屋中部国際空港の出入国管理局の職員に対し、度を越した公権力の濫用によって、再びこのような恥ずべき事態が起こらないよう注意をし、調査を行わねばならない。
(3)法務大臣は、このような恥ずべき事態の再発防止のために対策を立てよ。
これらの要求さえも黙殺されるなら、私たちは、世界各地で活動する人権諸団体と国際社会、そして世界の教会に今回の事態を知らせ、日本国政府に公式に抗議するであろう。
2008年7月2日
第13回外登法問題国際シンポジウム 参加団体ならびに参加者一同
韓国基督教教会協議会正義と平和委員会
韓国教会在日同胞人権宣教協議会
韓国カトリック司教会議正義と平和委員会
日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会
外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会