2006 宣言・声明

 第12回外登法問題国際シンポジウム共同宣言

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第12回外登法問題国際シンポジウム共同宣言

 

私たちは、第12回外登法問題国際シンポジウムを「東アジアの『和解』と『共生』」との主題のもと、2006年10月10日から12日にかけて韓国忠清北道清原郡において開催した。

韓国基督教教会協議会人権委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会、外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会が主催したシンポジウムには、韓国、日本、在日の教会から70名が参加し、歴史の主なる神の導きのもと、歴史や聖書、市民運動や個人の体験に聴きつつ、神から私たちに与えられている使命と課題を確認するために討議を行った。

 

韓国では今年5月、永住資格を持って3年以上居住する19歳以上の外国人の地方選挙権が実現した。これは、資格条件の緩和など改善されるべき課題を残しつつも、アジアでは初のことであり、韓国内だけではなく、日本に住む外国人にとっても大きな励ましとなる出来事であった。一方、日本では、在日外国人への地方参政権付与は、未だ実現していない。そればかりか、在日外国人の管理のための法制度が強化されている。

その象徴は、今年5月に改定された出入国管理及び難民認定法(入管法)である。改定入管法では、「テロ」の未然防止を理由に、16歳以上の外国人(特別永住者や外交官などは除く)は、日本への入国・再入国の際に、指紋と顔写真を登録することが義務付けられた。また、採取したデータを長期間保存し、「テロリスト」の入国防止以外の目的にも使用できるようにした。長い間の市民運動と国際連帯によって外国人登録法における指紋押捺制度が2000年に全廃されたが、改定入管法は、それを再び復活させることを通して、外国人への差別・偏見を助長し、特別永住者と一般永住者との家族や、日本人と外国人との家族を分断させるものであり、私たちは今回の改悪をとうてい容認することはできない。

 

私たちは、このシンポジウム開催に向けて準備をしていた直前の10月9日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が「地下核実験を行ったと発表した」という報道に接し、驚くと同時に大きな失望と困惑を覚えた。このことは、国際社会の長年の核軍縮への努力と、非戦・非核の平和運動に水をさすものである。私たちは、いかなる国であれ、一般民衆の生命と生活の安寧を願う政府であれば、核兵器開発に手を染めてはならないと考える。しかし、数十年にわたる北朝鮮に対する持続的な経済制裁と軍事的な脅威があったということを見逃してはならない。今は、さらなる対話と説得をもって、賢明な解決が必要な時である。

 

現在、日本では、新たに就任した安倍首相は、教育基本法および憲法などを改悪することを通して、日本を強力な軍事力をもつ国家とし、その国家に従う国民作りを進めている。日本のこのような方向は、東アジアにおける不安定要素を高めると共に、偏狭なナショナリズムを高揚させ、在日外国人に対する排外主義を強めるものである。

私たちは、日本政府が在日韓国・朝鮮人など在日外国人への差別制度を維持し、過去の過ちを繰り返そうとしている原因の一つは、過去の清算が真摯に行われていないことにあると考える。

韓国では、さまざまな市民団体が、過去の公権力による犯罪の真相究明など過去清算を求める運動を展開し、相当の成果を挙げている。それらの運動は、公権力により人権を侵害された人びとの名誉を回復すると共に、その再発を防止し、さらには民主主義を堅固なものとするためのものである。

一方、日本では、日本軍「慰安婦」や強制連行・強制労働関係の戦後補償裁判において原告が敗訴していることや、その立法化がなされていないことに象徴されるように、過去の清算は進んでいない。

このような中で、とくに日本の教会は、自らの過去において国策を擁護し戦争協力を行ったことを改めて心に刻む必要がある。戦前、日曜学校運動においても天皇制を積極的に擁護しつつ、アジア蔑視と軍国主義教育、そして、国家に従順な国民作りを推進してきた。その反省に立ち、日本の教会は、韓国の市民運動や教会に学び連帯しつつ、戦後補償問題など日本の過去を清算するための運動を展開し、日本を真の民主主義国家にする使命をもっている。

 

多くの人たちが世界的に行き来する時代にあって、私たちが目指すべき社会は、多民族・多文化の共生社会である。そのため、国籍に関係なく、社会に参加する「市民」という観点から、「外国人-国民」という二分法的思考から脱却する必要がある。そのために、日本ではまず、すべての人が共に生きる存在として自らの意見を反映する制度である地方参政権が認められるべきである。

私たちは、外国人と内国人との区別がなく、共に生きるすべての人びとに公平な待遇をすることが聖書の精神であることを知っている。また福音書において、主イエスは、隣人に対する警戒を解き、それを克服することが大切であると教えている。主イエスに従う私たちは、すべての人にとって住みやすい社会の実現にむけて、次の共同課題に取り組むことを表明する。

 

◆日・韓・在日教会の共同課題

1.私たちは、日本がかつて行った侵略と植民地支配・帝国主義戦争を復活させようとする、日本首相の靖国神社参拝と教育基本法および平和憲法の改悪に強く反対する。

2.私たちは日本政府に対して、外国人指紋制度を復活した入管法の改悪に強く抗議し、来年に予定されている外国人指紋・顔写真登録の実施を中止するよう求める。

3.韓国政府は昨年1月と8月、韓日国交交渉(1951~65年)に関する記録文書をすべて公開した。私たちは日本政府に対して、日韓国交交渉の関係文書を全面的に公開することを求める。とりわけ日本政府・自治体・企業が所有している植民地支配関連資料を公開することを強く求める。このことは、今後の日韓関係の発展のために、また日朝国交においても必要なことである。

4.私たちは日韓両政府に対して、日本の歴史責任を明記し、日本軍「慰安婦」、強制連行・強制労働などに対する戦後補償の実施、歴史認識の共有作業などを定めた新しい日韓協定を結ぶよう求める。

5.私たちは、韓国と北朝鮮が1992年の南北基本合意書第6次会談で合意した「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」を想起し、北朝鮮に核兵器開発の中止を求める。また同時に、民族分断の克服と東アジアの平和構築のために、米国や日本などに北朝鮮敵視政策の撤回を求める。

6.私たちは日本政府に対して、「非核三原則」の堅持をあらためて表明すると共に、日朝国交正常化交渉をただちに再開し、歴史の真の清算と和解、東アジアを平和に導く日朝条約を結ぶよう求める。

7.私たちは日韓両政府に対して、「すべての移住労働者とその家族の権利保護条約」の批准、未登録移住労働者の合法化、難民申請者の在留資格付与を求めると共に、日本政府は外国人研修制度を廃止し、韓国政府は産業研修制度を通して利益を得ている集団に雇用許可制度の労働管理を委ねることを撤回するよう求める。

8.私たちは日本政府・国会に対して、定住外国人の地方参政権を実現するよう求める。

9.私たちは日本政府・国会に対して、「外国人住民基本法」と「人種差別(民族差別)禁止法」の制定、政府行政機関から独立した「人権委員会」の創設を求める。

10.私たちは日本政府・国会に対して、在日韓国・朝鮮人など旧植民地出身者とその子孫に対する「在日人権基本法」の制定を求める。そこでは、日本の歴史責任が明記され、国際人権条約が定める民族的マイノリティとしての地位と権利が保障されなくてはならない。

11.いま世界において「テロ対策」の名のもとに外国人・民族的少数者への監視・弾圧体制が強化され、人権侵害にさらされていることに対して、私たちは教会の世界的ネットワークを活かして外国人・民族的少数者の人権獲得運動を展開していく。

12.私たちは、日本の歴史教科書の歪曲を許さず、日本・在日・韓国教会の歴史認識の共有をめざして、共同プログラムを推進する。その一つとして『歴史をひらくとき』(韓国語版『人差し指の自由』)新版を来年出版する。また、韓国・在日・日本教会の「歴史現場訪問プログラム」を継続する。

13.1970年代から始まる韓国民主化運動とそれに対する日本・在日教会の支援運動、1980年代から始まる日本・在日教会の外登法改正運動とそれに対する韓国教会の支援運動、これらの日本・在日・韓国教会の連帯の闘いを、私たちは若い世代に継承し発展させていく。その一つとして、「日・韓・在日キリスト青年共同プログラム」を積極的に支援する。

14.私たちは、「第13回外登法問題国際シンポジウム」を2008年、日本で開催する。

 

2006年10月12日

 

第12回外登法問題国際シンポジウム 参加者一同

韓国基督教教会協議会人権委員会

韓国教会在日同胞人権宣教協議会

韓国カトリック司教協議会正義と平和委員会

日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会

外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会

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