2010年/第24回
「外国人住民基本法」の制定を求める全国キリスト者1・30集会宣言
2010年1月28~30日、「外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会」(外キ協)は、第24回全国協議会を、大阪・生野の在日韓国基督教会館(KCC)にて開催し、「韓国併合から100年/多民族・多文化社会の宣教課題」という主題のもとに、韓国基督教教会協議会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、各地外キ連および外キ協加盟各教派・団体の代表者39名が参加した。協議会では、2009年の改定法(入管法・入管特例法・住民基本台帳法の改悪)に関する分析と批判を共有し、新政権に対して「外国人住民基本法」制定を働きかけていくことの重要性を再確認するとともに、2010年が「韓国併合」から100年を迎える年であることをふまえ、キリスト者としてこの世にどのように働きかけていくべきかについて真摯な論議がかわされた。
そして今日30日、大阪カテドラル聖マリア大聖堂において、「多民族共生社会を地域から」の主題のもと、「第24回『外国人住民基本法』の制定を求める全国キリスト者1・30集会」を開催した。
今、日本社会は大きな変化を迎えている。グローバリズムという世界的潮流の中で、経済的貧困や政治的抑圧から逃れるために国境を越えて日本に移住する人たちが増えている。ここ20年間で外国人登録者数が100万人から220万人に増えている。のみならず、外国籍住民の多国籍化と定住化の傾向はますます強まっている。このような大きな変化に直面し、日本社会は好むと好まざるとにかかわらず対応を迫られている。
政府は、戦後間もない1947年に始まり60年以上続いた外国人登録制度を全面的に改変して、「外国人管理」をさらに徹底しようとしている。外国人登録制度とは、外国人という存在そのものを「危険」とみなす発想に基づくものである。
2007年度から開始された入国・再入国時における顔写真・指紋情報登録制度に引き続いて、2009年には新たな在留管理制度の導入がなされ、7月には充分な議論もなされぬまま、与野党の水面下における合意によって、関連法の改正案が国会を通過した。
これにより、特別永住者に対する常時携帯義務を除くほぼすべての管理・監視体制が温存される一方、外国人を特別永住者/中長期在留者/非正規滞在者に分断し、このうち非正規滞在者を社会的に抹殺するという意味で、非人権性をさらに強めた制度が、実施に向けて動き出している。
その一方で、民主党新政権の発足により、永住外国人への地方参政権が実現のきざしをみせている。しかし、このような地方参政権法案を推進していく流れの中にも、植民地支配という過去の歴史をあからさまに肯定し、「朝鮮」籍者などの特定層を排除しようとする制限論がはびこっている。
さらに市民レベルの一部では、昨今のナショナリズムと排外主義の高まりにより、外国人住民に対する差別的意識が強まっている。日本経済は世界的な金融恐慌の影響により不況にあえいでいる。その結果、派遣切りや雇い止めなど最低限の保障も受けられない雇用状況のもとで働かざるをえない人々が出口の見えない閉塞感を抱きながら生きているが、そのやり場のない怒りと攻撃性が、立ち向かうべき目標を変えて、隣人である外国人に向けて発散されてしまっている。
私たちの目指すものは、分断と統治を前提とする抑圧的な支配体制ではない。また、弱いものいじめというおぞましい怨嗟の声ではない。「韓国併合」100年を迎えるこの時点にあって、私たちは日本がかつて他国を侵略し、植民地として踏みにじり続けていた歴史的事実をふりかえる。そしてだからこそ、植民地主義的な支配や意識のあり方が、今、あたらしく再編されつつあることを強く憂慮し、また断固としてそれを拒否するものである。
私たちが求めていることは、外国人を日本社会の住民と認め、その権利を保障し、アイデンティティの多様性を認めることである。それはすなわち、外国人住民をともに生きる主体として、すなわち地域社会をともにつくりあげていく存在として認めていくことである。
住民としての権利である以上、そこに国籍や在留資格の制限を加える必要はない。どの国籍を持とうが、どのような在留資格であろうが、そこに住む住民の意思と権利は保障されなければならない。
「外国人住民基本法」とは、外国人住民とともにこの社会に生き、豊かな活力をつくり出していこうとする私たちの決意のあらわれである。排外主義的な言動が強まりつつある今こそ、「外国人が暮らしやすい社会は、日本人にも暮らしやすい」という標語の意味を、ともに生き、生かしあう社会を目指すことを、私たちはいま一度、確認する。
パレスチナの小さなユダヤ人宗教共同体でしかなかった初代のキリスト教会が、他民族とともに生きることで豊かな広がりと実りを得たように、私たちもまた、民族的・文化的な他者とともにこの社会を形成することで、豊かな未来を得られることを信じる。それは彼らを生かす道であるとともに、実は私たちをこそ生かす道なのである。この地に生きる「隣人」たちとともに生きることこそ、キリスト者の生である。そう確信し、私たちは共生への道を祈りつつ進む。
〈政府および関係諸機関への要求項目〉
1.政府と国会は、在日韓国・朝鮮人など旧植民地出身者とその子孫に対して、日本の歴史責任を明記し、民族的マイノリティとしての地位と権利を保障する人権基本法を制定すること。
2.政府は、歴史の真の清算と和解に向けて、日朝国交正常化交渉を粘り強く進め、日朝国交の実現と「拉致問題」を解決すること。
3.国会は、米国議会などの決議を誠実に受け止め、「戦時性的強制被害者問題解決促進法」「恒久平和調査局設置法」を速やかに制定すること。
4.政府は、東アジアの和解と平和を実現し、ひいてはアジア全体や世界に対する不戦の誓いを実現するために「平和憲法」を具現化すること。
5.政府と国会は、日本国憲法と国際人権条約に基づいて外国人住民の人権が侵害されることがないように配慮し、その具体的なとりきめとして外国人住民の包括的な人権保障のための「外国人住民基本法」を制定すること。
6.政府は、「IC在留カード」の常時携帯や「みなし再入国許可」などによる差別的政策を改め、在日外国人の管理強化を目的とした2009年改定法(2012年実施)を再検討すること。
7.政府は、難民申請者への居住権保証、非正規滞在者への在留資格付与を行なうこと。
8.政府は入管法における外国人指紋・顔写真登録制度を中止すること。
9.政府と国会は、国際人権諸条約の選択議定書(個人通報制度)を批准し、「人種差別撤廃法」を制定するとともに、政府行政機関から独立した「人権委員会」を創設すること。また「すべての移住労働者とその家族の権利保護条約」を速やかに批准すること。
10.地方自治体は、在留資格の有無や違いにかかわらず、外国人住民の生活権を保障するとともに、外国人住民の住民自治・地方自治参画を積極的に推進すること。また、人種差別禁止条例、多民族・多文化教育指針を作成し、実施すること。
〈私たちの取り組み〉
1.「外国人住民基本法」制定を求める署名運動をより一層推し進める。
2.入国時における指紋など生体情報の登録制度が日本・米国以外の国に波及することを懸念し、その阻止および中止を実現するために世界のキリスト教会と連帯し、情報の共有をはかる。
3.教会内で声なき人の声を聞き取ることができるよう、また外キ協活動が宣教課題として認識・理解され協力が得られるよう、各地外キ連、諸教派・団体、神学校において学習会・研修会などの機会を拡げていく。そしてその際、日・韓・在日共同ブックレットを積極的に活用していく。
4.「韓国併合」100年という歴史的地点にあることをふまえ、シンポジウムを7月初旬に開催し、日・韓・在日教会のこれからの協働のあり方を模索していく。また韓国教会「在日同胞苦難の現場訪問」を実施する。
5.多文化・多民族共生を目指す具体的な取り組みとして、「移住民の神学」の共同研究プロジェクトをすすめる。また今年も第3回キリスト者青年現場研修プログラムを実施する。
2010年1月30日
第24回「外国人住民基本法」の制定を求める全国キリスト者1・30集会 参加者一同
外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会