2008年/第22回
「外国人住民基本法」の制定を求める全国キリスト者1・19集会宣言
2008年1月17~18日、「外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会」(外キ協)は、第22回全国協議会を、九州・山口地域で人権センターとしての役割を担ってきた北九州市小倉の西南韓国基督教会館(西南KCC)において開催した。「多民族社会の中の教会の役割」との主題のもと行なわれた全国協議会には、韓国基督教教会協議会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、各地外キ連および外キ協加盟各教派・団体の代表者35名が参加した。
16日には、強制連行・強制労働の歴史を訪ねる現場研修を行ない、強制連行が近代日本の侵略戦争・植民地主義的拡大を遂行するために行なわれたことを確認し、二度と同じ過ちを繰り返さないために歴史と真摯に向き合うことが大切であることを改めて心に刻んだ。また、強制連行の現場から聞こえてくる犠牲者たちの問いかけに耳を傾ける中、現在の在日外国人に対する差別・偏見をなくす働きが、彼ら彼女らの問いに応える道であることを確信した。
そして、今日19日、在日大韓基督教会小倉教会において「『多民族・多文化共生社会』へのメッセージ」との主題のもと、「第22回『外国人住民基本法』の制定を求める全国キリスト者1・19集会」を開催した。
いま日本では、「出入国管理及び難民認定法」(入管法)や「外国人登録法」(外登法)を中心に、政府による外国人管理体制の強化が、外国人をその在留資格によって分断する中で推進されている。「テロ」対策を理由に一昨年(2006年)改定された入管法による入国・再入国時の指紋・顔写真登録制度が、昨年(2007年)11月20日より実施された。特別永住者や外交関係者などを除いた16歳以上の外国人に対して適用される同制度によって、外国人に対する差別・偏見が助長されている。また、指紋を強制されることによって、在日外国人、とくに同世代との「違い」をマイナスの形で思い知らされる高校生世代の在日外国人が受ける精神的苦痛は計り知れない。日本において、また、日本に先んじて同制度を導入した米国においても、同制度が「テロリスト」発見につながったという明白なケースはない。
また、日本政府は昨年10月に「外国人雇用状況報告制度」を義務化し、現在、「外国人IC在留カード」導入など、外登法を「抜本的」に改定し、外国人管理強化をさらに推し進めようと計画している。
現在、外国人登録をしている在日外国人は208万人を超えている。人口の15%が在日外国人という自治体もある。本来、このような状況にあって求められるのは、日本人と外国人の共生の道であり、日本政府はそのような道の整備を行なう立場にある。韓国では外国人に地方選挙権を認め、昨年には「居住外国人処遇基本法」を制定している。しかし、日本政府の外国人政策は、排外主義・人種主義であり、外国人にとって日本は住みにくい社会となっている。たとえば、外国人学校に対する差別的待遇や日本の学校における同化主義教育によって、在日外国人の子どもたちの教育を受ける権利が奪われている。
私たちは、このような排外主義の一因には、歴史に真摯に向き合わない日本政府の姿勢があると考える。「戦時性的強制被害者」たちを、未だ救済せず、また、隣国の人びとと共有できるような歴史教育を実施しようとしていない。
私たちが求めているものは、排外主義・人種主義による外国人管理の強化ではなく、歴史に学びつつ、外国人を共に地域社会をつくる住民として位置づけた、多民族・多文化社会建設に欠かすことのできない法制度の整備である。私たちが提案している「外国人住民基本法」は、その具体化である。
多国籍企業の活動が象徴する経済グローバル化が進む中、国家間および国内における格差が広がり、多くの人たちが故郷を離れることを余儀なくされている。その中で、諸国家は、安全保障の名のもとに出入国の管理をはじめ、在留外国人管理の強化を進めている。私たちは、外国人の管理ではなく、一人ひとりのいのちが大切にされる社会の実現、すなわち人間の安全保障こそが、最終的には国家の安全保障にもつながるということを私たちの活動を通して、世界に訴えていきたい。
多文化・多民族化する日本社会にあって、日本の教会も多文化・多民族化し、外国籍信徒が劇的に増加している。そのような状況にある教会にあっては、教会の内外における多文化・多民族共生社会の建設という宣教における使命が、ますます重要なものとなっている。私たちは、日本社会を誰にとっても住みやすい社会に変えていく働きの中で、主と出会い、一人ひとりのうちにある主の光に照らされ、主にある平安と希望に満たされながら、その働きを推進していくものである。
〈政府および関係諸機関への要求項目〉
1.政府および国会は、現在計画している「外国人IC在留カード」の導入などを含む、在日外国人管理強化を目的とした外登法の改定を中止すると共に、外登法に代えて、外国人住民の包括的な人権保障のための「外国人住民基本法」を制定すること。
2.入管法における外国人指紋・顔写真登録制度の実施を中止すること。
3. 在日韓国・朝鮮人など旧植民地出身者とその子孫に対して、日本の歴史責任を明記し、民族的マイノリティとしての地位と権利を保障する「在日基本法」を制定すること。
4.国際人権法に基づく「人種差別撤廃法」を制定すると共に、政府行政機関から独立した「人権委員会」を創設すること。また「すべての移住労働者とその家族の権利保護条約」を速やかに批准すること。
5.「外国人雇用状況報告制度」を中止し、超過滞在者への在留資格付与(アムネスティ)など、入管法の抜本的改正を行なうこと。
6.地方自治体は、在留資格の有無や違いにかかわらず、外国人住民の生活権を保障すると共に、外国人住民の住民自治・地方自治参画を積極的に推進すること。また、人種差別禁止条例、多民族・多文化教育指針を作成し、実施すること。
7.国会は、米国議会などの決議を誠実に受け止め、「戦時性的強制被害者問題解決促進法」「恒久平和調査局設置法」を速やかに制定すること。
8.政府は、歴史の真の清算と和解に向けて、日朝国交正常化交渉を粘り強く進め、日朝国交の実現と「拉致問題」を解決すること。
9.東アジアの和解と平和を実現し、ひいてはアジア全体や世界に対する不戦の誓いを実現するために「平和憲法」を具現化すること。
〈私たちの取り組み〉
1.「外国人住民基本法」制定を求める署名運動を一層推し進める。
2.「外国人指紋」制度の中止を求める署名活動と、「私たちの一言」運動を開始する。また、入国時における指紋など生体情報の登録制度が日本・米国以外の国に波及することを懸念し、その阻止および中止を実現するために世界のキリスト教会と、情報の共有をしながら連携体制を築く。
3.教会内で外キ協活動が宣教の課題として認識・理解され協力が得られるよう、各地外キ連、諸教派組織を積極的に生かして、日・韓・在日教会ブックレットを活用しつつ、学習会・研修会などの機会を拡げていく。
4.第13回外登法問題国際シンポジウムを日本で開催すると共に、韓国教会「在日同胞苦難の現場訪問」を実施する。
5.多民族・多文化共生をめざすユース交流会やキリスト者青年現場研修プログラムを推進していく。
2008年1月19日
第22回「外国人住民基本法」の制定を求める全国キリスト者1・19集会 参加者一同
外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会