◆第16回国際シンポジウム共同声明◆
日本・韓国・在日教会の共同課題
寄留者を虐待したり、圧迫したりしてはならない。あなたたちはエジプトの国で寄留者であったからである。(出エジプト記22章20節)
すべての人は神の似姿として造られ、尊厳を持つ存在であることを信じる、私たち日・韓・在日のキリスト者は、2012年10月29~31日、韓国ソウルのアカデミーハウスで、「韓日移住民の現況と課題」という主題のもと第16回国際シンポジウムを開催した。
韓国と日本の移住民の数は、それぞれ145万人と200万人に達しており、その数は増え続けている。しかし両国では、単一民族意識・文化的優越主義・排他的民族主義が社会全体に深く根づいており、移住民に対する差別が社会的問題として現われている。韓国と日本・在日のキリスト者は、今回の国際シンポジウムを通じて、両国の移住民の人権の現実がよく似ているだけではなく、彼ら彼女らに対する差別と人権侵害が深刻であるという認識を共有した。
両国の移住民政策は、移住民の権利を制限することで、制度的に人権を侵害しており、閉鎖的な国家政策によって社会的統合を阻害している。私たちは、アジアで人権的基準を高めるために先頭に立つべき両国が、移住民の権利を無視し人権を侵害していることに対し、深い失望と憂慮を表すものである。
◆韓国の問題
去る8月31日、国連の人種差別撤廃委員会が指摘したように、韓国では社会全般にわたって、移住民が権利を侵害されており、政府の改善努力が急がれる。
結婚移住女性たちは韓国人配偶者に従属しており、在留資格の変更など法的手続きにおいて、自立的な権利行使が困難であり、国内外的に「売買婚的性格を持つ国際結婚方式」の問題が指摘されている。
中国同胞と旧ソ連圏同胞の場合、自由な往来の権利が保障されていない差別的な処遇を受けている。憲法裁判所の違憲判決により、1948年[大韓民国樹立]以前に出国した同胞たちにも同胞としての資格を認定しなければならないが、政府は入国を制限しており、彼らの怒りと怨嗟は解消されずにいる。
移住労働者たちの苦痛も深刻である。彼らは4年10カ月の間、韓国で働きながらも、自発的な意志による職場の変更ができない。移住労働者の職場移動の自由を剥奪した政策[雇用許可制]によって、強制労働と労働搾取が日常化されているので、「奴隷制度の復活」という批判を受けている。
非正規移住労働者たちは、取り締まりと追放の恐怖のため賃金未払い、暴行など各種の被害に対する権利保護を受けられずにおり、彼らの中で多くの子どもたちは人権保護において見えない存在とされている。
◆日本の問題
日本では2011年3月11日に発生した東日本大震災によって外国人住民も被害を受けたが、彼らの多くが支援から疎外されている。このような現実は、日本国内で移住民に対する関心がいかに不足しているかを如実に示している。
また、さる7月9日から「外国人登録法」が廃止され、新しい「出入国管理及び難民認定法」(入管法)が施行されている。改定された法律は、外国人を「人間」として「生活者」として扱うのではなく、「商品化された労働力」として扱い、管理・統制しようとする政策的目標を明らかにしている。この法律のもとで、外国人は複雑な義務規定などを履行しなければならず、これに違反した場合、過酷な処罰と在留資格取り消し(強制退去)が科せられる。在留カードには、個人の写真と個人情報が含まれたICチップが挿入され、政府が簡単に統制することができるようになっている。さらに、在留資格を持たない非正規在留者の場合、日本社会で働くことも生きることもできない状況に追いやられている。
日本の「外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会」(外キ協)は1998年、「外国人住民基本法」という市民法案を作成し、日本の国会と社会に提案している。日本国内の移住民たちが持つ普遍的権利を保護する法律の必要性を確信したからである。しかし、最近施行された法律は、外国人の尊厳と自由を保護するよりも、彼らを管理し統制することを目的として作られたものであるので、正当性を持ち得ない。移住民が持つ労働者、生活者、住民、女性としての地位と権利が保障されなければ、「共生社会」は実現されない。
移住民の増加は、日本と韓国社会、また教会においても、新しく変化する機会である。私たちは、韓国と日本が移住民と共に生きられる社会的・文化的・制度的土台を作るため、人権を尊重する政策作りに共同の努力を尽くすものである。私たちは、以下のように立場を明らかにする。
1.私たちは、日本政府が被災地域に生きる外国人(約6万人)に対し、実態調査、就労・就学・生活保護などの支援措置を、自治体および宗教団体・市民団体と連携して実施することを求める。
2.私たちは、日本政府が、今年7月から改定実施された入管法、入管特例法、住民基本台帳法にある罰則規定(在留資格取り消し、刑事罰制度)を削除することを求める。また日本政府と国会に対して、改定法附則にある「3年後の見直し」に向けて、改定法の諸問題を徹底的に検証し、抜本的な改正を行なうと共に、外国人の基本的権利を明示した「外国人住民基本法」の制定、外国人の地方参政権の実現を求める。
3.私たちは、韓国政府が、移住労働者の職場移動の自由を保障せよという国連人種差別撤廃委員会の勧告をただちに受け入れ、移住労働者の労働許可制を志向することを求める。
4.私たちは、日本と韓国の政府が、植民地時代に強制的に徴用され人権侵害と労働搾取を受けた在日同胞およびその子孫に対する責任を明確にし、国家レベルでの支援の実現を求める。
5.私たちは、日本と韓国の政府が、非正規移住民(日本:約7万名、韓国:約17万名)に対して合法的な地位を与え、国連の移住労働者権利条約に批准することを強く求める。
6.私たちは、日本と韓国の政府が「人種差別禁止法」を制定し、移住民と社会的少数者の権利を保護することを求める。
7.私たちは、移住民の権利保護が神の御旨と摂理に従う使命であることを認識し、その実現のためにアジアや世界の教会との協力を推進する。
8.私たちは、移住民の人権保護のため、韓・日・在日キリスト者の連帯と協力を継続することを確認し、第17回国際シンポジウムを2014年、日本で開催する。
2012年10月31日
韓国基督教教会協議会(韓国NCC)正義と平和委員会
韓国カトリック司教会議正義と平和委員会
外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)
日本キリスト教協議会(日本NCC)在日外国人の人権委員会