「外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会」(「外キ協」)は、2019年1月24日から25日にかけて第33回全国協議会を在日大韓基督教会 広島教会ならびに日本基督教団 広島流川教会にて開催しました。「ヒロシマから多民族・多文化共生の天幕をひろげよう」という主題のもとに、各地外キ連および外キ協加盟各教派・団体、韓国NCCの代表者ら60余名が参加し、多民族・多文化共生社会実現のための課題とこれからの取り組みについて協議しました。
協議会では、広島における外国人住民支援の取り組み、在日韓国・朝鮮人被爆者支援の取り組み、民族教育の歴史と現状について学び、また2018年西日本豪雨災害での被災状況および支援活動の報告を受けました。そして外国人住民との共生社会の実現を求める行政交渉の関西での取り組みについて、また2018年の入管法改定が在日外国人の権利と生活を脅かす深刻な問題を有している現状を共有しました。さらに、ヘイトスピーチが常態化し弱者に犠牲を強いながら沈黙したままの日本社会の状況がいかに自らを破壊しているか、そこからの解放をどのように求めていくのか、そして人権を軽んじる日本の行政・政治の現実をどのようにして変えていくのか、という問いを分かち合いました。そして教会が使命とすべき、尊厳を奪われた者の声を聴き他者のために存在するあり方について聖書から聴き、東北アジアの和解と平和を求める韓国教会の実践とこれからの課題について共有しました。
広島での原爆の被害を知る時、戦争を推し進めることで、人と人を分断し、命と尊厳を踏みにじり抑圧した植民地支配の歴史に同時にわたしたちは向き合わなければなりません。しかし今、政治の分野だけでなく、教育・経済など日本社会の様々な領域で、過去の侵略の歴史を否定する流れが作られています。人種・性・民族による様々な差別は今もなお日本社会を深く蝕んでいます。この差別と対決し乗り越えるためには、戦争へと向かった過去の歴史に真摯に向き合い、その過ちを明らかにすることを避けて通ることが出来ません。そして、それこそが和解と平和の実現への道であることをわたしたちは確信しています。
2018年12月、「出入国管理及び難民認定法」(「入管法」)が改定されました。しかし、数多くの失踪、事故、そして死亡(自殺含む)を引き起こし、国際社会において「現代の奴隷制度」とも呼ばれる技能実習生制度を温存したまま、日本の労働不足を補おうと、さらに「特定技能」資格をもって数十万人の外国人を劣悪な低賃金労働力として導入しようとする制度が今年の4月に始められようとしています。その実態は、外国人の人権を踏みにじり、単なる使い捨て的な労働力として利用するためのものでしかなく、包括的な移民政策・人権政策とはかけ離れたものです。歴史に学ぶならば、人間を労働力・生産性の観点でしか評価しない価値観は、確実に社会を分断し、破壊していきます。全ての人の命と尊厳そして人権が守られる多民族・多文化共生社会を作るためには、外国人を地域に生きる一人の人間として尊重し、住民としての生活を支え、差別を明確に禁止し、それぞれの文化を生かしあう制度を整えることが不可欠です。
多民族・多文化共生社会の実現のためにわたしたちは、世界に向けて日本のマイノリティの人権状況を発信し、日本・韓国・在日教会の共同作業を通して、歴史に向き合い、真実と和解に向けた対話を進めてゆきます。また日本国内において豊かな多様性を実際に共有する機会を持つとともに、地方自治体に対して人種差別撤廃基本条例の制定、多民族・多文化共生都市宣言などを働きかけてゆきます。そして国に対してヘイトスピーチ解消法の実効化と「外国人住民基本法」ならびに「人種差別撤廃基本法」の制定を求めてゆきます。
イエス・キリストは、傷つけられ排除された者たちと共に、その一人として歩むことによって、わたしたちに新しい命に生きる道を示されました。全てのキリスト者は、このキリストに従うように呼び掛けられています。わたしたちもまたキリストに従い、社会の中のマイノリティの声を聴き、共に歩み、差別と闘うエキュメニカル・ネットワークを作るために、世界のキリスト教会との協働を積極的に進めてゆきます。
わたしたちは今日、日本基督教団広島流川教会において「第33回『外国人住民基本法』の制定を求める全国キリスト者集会」を開催し、多様な文化を有して共に生きる社会の豊かさを分かち合いました。分断を乗り越え、この地上に和解と平和を実現することを福音宣教の使命として未来に向かって歩み続けることをわたしたちは決意します。
2019年1月25日
第33回「外国人住民基本法」の制定を求める全国キリスト者集会 参加者一同
外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会