2009 宣言・声明

第14回外登法問題国際シンポジウム 共同声明

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第14回外登法問題国際シンポジウム 共同声明

私たちは6月22日(月)~24日(水)、第14回外登法問題国際シンポジウムを、「東アジアの和解と共生――『韓国併合』から99年:韓・日・在日教会の共同課題」という主題をかかげて、韓国全羅南道康津・茶山修練院において開催した。韓国側からは韓国基督教会協議会正義と平和委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、韓国カトリック司教会議正義と平和委員会、日本側からは外登法問題に取り組む全国キリスト教連絡協議会、日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会が共催して行なわれた。このシンポジウムには59名が参加し、来年2010年は、日本が軍事力によって強制した「韓国併合」100周年を迎える歴史的時点にあって、どのようにして東アジアの和解と共生の世界を展望しうるのかを協議した。

私たちは、シンポジウムの主題講演・聖書研究・発題の発表をうけて、 日韓の100年間の歴史をふりかえり、グローバルな富の不均衡が際限なくすすむ現情勢にあって、民衆レベルでの和解と共生についての理解を深め、課題を展望できたことを、深く神に感謝する。

アジアという言葉は、そもそも「野蛮人」の土地として、文明のない場所と規定するヨーロッパ中心主義的なイデオロギーとして利用されてきた。日本の帝国主義も、そのイデオロギーを模倣し、日本を中心とした「大東亜共栄圏」をつくろうと、アジア諸国を侵略し植民地化した。しかも戦後の日本社会は、戦後補償問題をはじめとする諸問題を解決できないままでいる。また教会も含めた日本社会は、アジアに対する蔑視と偏見――オリエンタリズムを克服することなく、今日に至ってしまっている。

いま日本も韓国も経済的格差が加速度的に拡大する状況にあって、昨年秋のアメリカ発の経済恐慌は、世界同時的な大きな社会不安をもたらした。新自由主義経済の破綻である。しかも、各国において経済的格差、社会福祉の切り捨て、貧困などの問題、不平等の拡大が、排外主義的ナショナリズムを生み出すという悪循環に陥いり、特に非正規労働者や外国籍の移住労働者とその家族にたいする影響は甚大である。このような情勢の中で韓国・在日・日本の教会の取り組むべき課題はますます重要である。

さらに現在、日本においても、韓国においても、移住労働者・移住者たちをさらなる監視・管理の網に編入し、非正規滞在者を社会的に排除する体制が制度的に強化されつつある。日本においては、今年3月、政府が入管法・入管特例法・住民基本台帳法の改定案を国会に提出した。この法案は、6月19日に衆議院で一部だけ修正されて通過し、参議院で審議されている。もしこの法案が通れば、3年後、日本に住む外国人は、窒息するような監視・管理体制におかれることになる。

また韓国においては、2004年に外国人登録時の指紋押捺制度が廃止されたが、来年2010年には、米国・日本に次いで世界で3番目に、外国人の入国時における生体情報(顔写真・指紋)提供を義務づけようとしている。

私たちは、日本の国会において審議中の上記3法案に、反対する。これらの法案は、国際連合の自由権規約委員会からの勧告、人種差別撤廃委員会からの勧告、子どもの権利委員会からの勧告、女性差別撤廃委員会からの勧告など、国際人権機関からの度重なる是正勧告を無視した内容になっているからである。

また私たちは、韓国における外国人指紋・顔写真採取制度導入に反対する。これは、多文化社会を志向する韓国政府の政策に反し、移住民を潜在的「犯罪集団」とみなす反人権的政策である。

私たちキリスト者は、それぞれの民族や集団の違いを超えて、すべての人が一つの人類の共同体であるという意識をはっきりよびおこし、それぞれの民族・人種の文化的な多様性を認識しなければならない。そもそも人権は、個人と集団の「不法の経験」からつくられる。人間と民族と国家がせめぎあう現場から、人が人として生きるうえでの尊厳の保障を私たちは訴えていかなれなければならない。聖書の御言葉である、「エジプトでの奴隷生活を記憶し、異邦人を顧みなさい」を心に刻まなければならない。

≪日・韓・在日教会の共同課題≫

1.私たちは、新自由主義経済というグローバル経済世界に対抗し、真の「共生社会」を実現するために、東アジア地域の過去の歴史を究明することによる和解を推し進め、新しいネットワークをさまざまな次元で構築する。そして日本政府に対して、戦後補償問題、「慰安婦」問題、教科書歪曲問題などを早急に解決するよう求める。

2.私たちは、「テロ対策」の名目のもとに、外国人、マイノリティへの監視社会、人権侵害などを強化する日・韓の出入国管理制度の改悪に対し、世界教会と協力しながらこれに反対していく。

3.私たちは、日本の在留カードなど新入管法に反対するとともに、韓国政府に対し、入国時の外国人指紋・顔写真登録制度導入の中止を求める。

4.私たちは、日本政府・国会に対して、「外国人住民基本法」「人種差別禁止法」の制定、政府機関から独立した国家人権委員会の創設を求める。

5.私たちは、「在日韓国・朝鮮人の歴史性を反映した、民族的マイノリティとしての地位と権利の保障」「移住労働者・結婚移住者・難民の人権保障」を、教会の宣教課題として取り組む。

6.私たちは、日・韓政府に対して「すべての移住労働者とその家族の権利保護条約」の批准、未登録移住労働者の合法化、難民申請者の在留資格付与を求める。

7.私たちは、日本政府・国会に対して、定住外国人の地方参政権を実現するように求める。

8.私たちは、韓国と北朝鮮が1992年の南北会談で合意した「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」を想起し、北朝鮮に核兵器開発の中止を求める。また同時に、民族分断の克服と東アジアの平和構築のために、米国や日本などに北朝鮮敵視政策の撤回を求める。

9.私たちは、日本政府が「非核三原則」の堅持を改めて表明すると共に、日朝国交樹立交渉をただちに再開し、歴史の真の清算と和解、東アジアを平和に導く日朝条約を結ぶよう求める。

10.私たちは、来年の「韓国併合」100年にあたり、日本・韓国・在日教会が共同声明を発表し、未来に向けて和解と共生のためのビジョンとマスタープランを提案する。

11.私たちは、韓国教会「在日同胞苦難の現場訪問」を、今後も継続する。

12.私たちは、若い世代の交流とネットワークの形成や、「共生社会」実現のビジョンを描く人を養成するために、「多民族・多文化共生キリスト者青年」現場研修を継続する。

13.私たちは、世界的な交流、多文化共生社会、移住民の神学などの研究・促進のために研究チームを作り、交流する。

14.私たちは、それぞれが直面している問題を共有し、東アジアの和解と共生という日本・韓国・在日3教会の共同課題を協議し実践するために、今後も国際シンポジウムを継続する。次回は2011年に日本で開催する。

2009年6月24日

第14回外登法問題国際シンポジウム参加者一同

韓国基督教教会協議会正義と平和委員会

韓国教会在日同胞人権宣教協議会

韓国カトリック司教会議正義と平和委員会

外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会

日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会

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