2011 宣言・声明

第15回外登法問題国際シンポジウム 共同声明

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第15回外登法問題国際シンポジウム共同宣言

2011年3月11日、日本の東北・北関東地方を襲ったM9の大地震とそれに伴う大津波によって、多くの人々の命と生活が根こそぎ奪われた。南北500kmの広域にわたって市町村が壊滅的な打撃を受け、死者・行方不明者は2万人を超え、震災から4カ月を経た現在も9万人以上の被災者たちが避難生活を強いられている。さらに、福島第一原発の事故によって、大量の放射能を放出してしまう事態に至って、被災者たちへの支援は途方もなく困難で複雑なものとなってしまった。安全神話の虚構と慢心とが引き起こした人災の悲劇的結末を突きつけられ、私たちは今、深い悔い改めと根本的な社会変革・生き方の転換が迫られている。
被災者への支援と復興の課題は多岐にわたり、幾層にも重なっているが、その根底において問われているのは、人間一人ひとりの尊厳と繋がりを基盤に据えた社会を再生していくことである。人間同士の結びつきよりも、生産性や効率性を優先させてしまう社会は、暴力的であり、かつ脆弱である。復興し、再生されるべき社会の指標の一つは、外国人にとって暮らしやすいかどうかである。

震災発生から今日までの報道において、欠落してきたものは、被災した外国人の安否情報である。その事実は、日本社会が外国人住民を日常的に周縁化してきたことを物語っている。
そのことは、今日までの日本社会の過ちを映し出している。すなわち、敗戦より66年、戦争責任を曖昧にし、朝鮮半島やアジア諸国の犠牲者・被害者への戦後補償を放置したままに過ごしてきた日本社会の過ちと、日本が未だに植民地主義を克服できずにいることである。
私たちは、昨年、「『韓国併合』100年/『在日』100年」の節目を心に刻み、新たな決意をもって「101年目」を歩みだした。その直後に遭遇した今回の大震災。このあまりにも重大な問いかけを放つ「時(カイロス)」を、私たちはうけとめなければならない。そのような「時」を迎え、私たち日・韓・在日教会は第15回外登法問題国際シンポジウムを、東京の在日本韓国YMCAにおいて開催した。

資本の論理が暴走し、植民地主義が台頭するとき、人間は労働において細分化され、序列化され、移動を管理・監視される。そして労働力としての外国人は、多民族・多文化を背景としていながら、画一化され、同質化を強いられ、多文化の主体・交流の主体となることを阻まれ、分断され、排除される。
現在、日本においても、また韓国においても、外国人を監視し、非正規滞在者を社会的に排除する制度が構築されつつある。日本においては、新たな外国人政策としての入管法・入管特例法・住民基本台帳法が、2012年7月にも施行されようとしている。また韓国においては、2010年、米国・日本に次いで外国人の入国時における生体情報(顔写真・指紋)提供を義務づける法が制定され、これから実施されようとしている。私たちは、このような外国人管理制度に反対する。

今日の世界は、グローバル化した欲望に席巻され、多くの命が、差別と抑圧、搾取と収奪、憎しみの連鎖の危機に晒されている。しかし、その世界のただ中で、私たちは誰もが自らの尊厳を確認し、自らの命を喜びつつ、違いを認め合いながら交わることのできる和解の福音へと、招かれている。最も小さき人々の傍らで神の国を宣言し、神と人、人と人とを結び合わせる和解の主、イエス・キリストのもとで、私たちは共に生きよう。

私たちは、東日本大震災の被災者たちの人生の再建を心から祈る。そして、外国人被災者たちの人生もまた、そこにおいて共に立ち上がることを強く祈りつつ支援する。
私たちは、東日本大震災の犠牲者たちを心から悼む。そして、その中に、多くの外国人犠牲者たちの命があったことを心に刻み、主なる神の御手に委ねて祈る。
そして私たちは信じ、訴える。日本で震災に遭遇し、命を奪われ、日本でこの悲しみに直面している外国人住民を忘れ去ったままに、真の復興も、新しい社会の創造もなし得ないということを。

私たち日・韓・在日の教会は、東日本大震災の痛みを共にわかちあい、これから創生されていく社会が真の多民族・多文化共生社会となるために、絶えず祈り、力を合わせて働く。

1.私たちは、被災した外国人(在日韓国・朝鮮人および、移住民)にかかわる情報を共有し、各教派・団体、各市民団体、各関係機関の支援活動と連携して、以下のことを行う。

①被災した在日韓国・朝鮮人高齢者に対して、生活支援を行う。
②日本人と結婚あるいは死別し、孤立している外国人被災女性に対して、精神的ケアと生活支援を行う。
③被災した外国人住民の子どもに対して、就学支援を行う。

2.私たちは、政府・自治体・関係機関に対して、外国人被災者に関する情報を開示・提供することとともに、以下のことを行うよう求める。

①被災者に対するあらゆる支援措置、保護施設・避難施設において、多言語による情報提供、通訳をつけての説明と手続きを行うこと。
②震災復興政策の策定と実施においては、これまでの経済成長至上主義をやめ、被災者一人ひとりの住まいと生活の再建を第一とする地域社会の復興、その中での外国籍の子どもたちの就学確保などを行うこと。

3.私たちは、今回の東日本大震災で露呈した、解決不可能ともいえる諸問題が、戦後日本の政治・経済・社会全体の根本的問題に起因すること、すなわち戦前の植民地主義を克服することなく自国民中心主義、経済成長至上主義に走ったことを確認し、以下のことを日本の政府と国会に求める。

①日本の政府と国会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を徹底的に検証・究明し、その経過と結果を随時、日本のみならず世界に公表すること。
②日本の国会は、1905年の保護国化の強要から1910年の韓国強制併合に至る一連の諸条約が無効であることを認め、植民地支配の罪責を追及し、謝罪する決議を行うこと。
③日本の政府と国会は、1923年関東大震災時の朝鮮人虐殺、朝鮮人強制連行・強制労働、靖国合祀、日本軍性奴隷とされた「慰安婦」など、「植民地犯罪」について、その当事者と遺族に対する謝罪と補償の立法と実施を、速やかに行うこと。
④日本の政府と国会は、在日韓国・朝鮮人など旧植民地出身者とその子孫に対して、「人権基本法」を制定するとともに、「外国人住民基本法」「人種差別撤廃法」「国内人権機関設置法」を制定すること。
⑤2009年に公布された新入管法、すなわち外登法を廃止して外国人を管理/排斥する改定法は、外国人住民を労働力か否かとみなす非人間的な立法である。日本政府はその改定法の来年7月の実施を中止すること。

4.私たちは、日・韓政府に対して、外国人への監視・人権侵害を強化する、入国/再入国時の外国人指紋・顔写真登録制度を中止するよう求める。

5.私たちは、日・韓政府に対して、「すべての移住労働者とその家族の権利保護条約」の早期加入、非正規滞在外国人の合法化、難民申請者の在留資格付与を求める。

6.私たちは、韓国教会「在日同胞苦難の現場訪問」を今後も継続する。

7.私たちは、若い世代の交流とネットワークの形成、東アジアの和解と共生というビジョンを描く青年を育成するために、「キリスト者青年の旅」を再開する。

8.私たちは、それぞれの教会が直面している問題を共有し、東アジアの和解と共生という日・韓・在日教会の共同課題を協議し、実践するために、国際シンポジウムを継続する。次回は来年2012年に韓国で開催する。

2011年7月26日

第15回外登法問題国際シンポジウム参加者一同
韓国基督教教会協議会正義と平和委員会
韓国教会在日同胞人権宣教協議会
外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会
日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会

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