名古屋中部国際空港拘束事件に対する抗議声明
私たちは、2008年6月30日から7月2日まで、第13回外登法問題国際シンポジウムを、主題「東アジアの和解と共生のビジョン――日・韓・在日教会の共同課題」のもと、愛知県犬山市において開催した。
韓国基督教教会協議会正義と平和委員会、韓国教会在日同胞人権宣教協議会、韓国カトリック司教会議正義と平和委員会、日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会、外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会が共催した国際シンポジウムには、韓国、日本、在日の教会から55名の参加があった。
私たちは、反外登法の運動を展開する中で、在日韓国・朝鮮人の解放のための活動を教会の使命として担うことを目的に国際シンポジウムを1990年に開始して以来、人びとが共に生き、共に生かし合う社会の実現を目指してきた。そして今回のシンポジウムでは、日韓の両社会がグローバリゼーションにより急速に「多民族・多文化」化する中での教会の使命と役割について、主題講演と聖書研究、事例報告、発題を受け、協議した。
今回のシンポジウムに参加する前、2008年6月30日午前11時に名古屋中部国際空港に到着した韓国側の参加者(17人)は、名古屋中部国際空港で数時間もの間、不当にも厳しい調査を受け拘束された。韓国側参加者は出入国管理局の責任者に対し抗議して公式の謝罪を要求したが、公式の謝罪はなされなかった。その結果、公式的な国際シンポジウムである本会議に遅れや行き違いが生じた。私たちは、韓国側の参加者が空港で行なった抗議に全面的に賛同し連帯するのみならず、日本政府に対して怒りを感じる。
以下に私たちの立場を表明する。
(1)4時間もの間、韓国側参加者は拘束されたのだが、拘束されている理由を私たちが尋ねても、当局はその理由を全く明らかにしなかった。これは、身体の自由を長時間、束縛しながら、一言も説明しなかったということであり、公権力を行使した人権侵害である。
(2)4時間もの間、狭いバイオ検査室に拘束され閉じこめられた。ここは、入国者が伝染病などに感染していないかを検査する場所であり、入り口がふさがれておらず、部屋の外を通り過ぎる人が部屋の中を覗き見ることができるようになっている。英語の分からない多くの人たちは、部屋を覗き見ながら笑いながら通り過ぎていった。拘束されていた者が、まるで犯罪者であるかのように外部に映った。
(3)昼食の時間が過ぎても食事とお茶など飲み物を与えず、緊張と不安を引き起こすなど、外国人に対する差別と人間の普遍的な権利に対する侵害を躊躇なく行なったと私たちは理解する。
(4)一行の中の女性1名のカトリック教会の修道女を2時間ほど集中的に調査するなど精神的な苦痛を与えた行為と、それにより理由も知らされないままバイオ検査室にいた他の者たちに対して不安感を引き起こしたことは、一般的な常識を越えた公権力の濫用であったと言わざるをえない。
(5)責任者との面会と謝罪を要求する正当な行為に対しても、責任者である所長との面会さえ許可されず、むしろ、通常なら90日である在留期間を15日に短縮した担当者の決定は、公権力による外国人の旅行の自由の制限であると言わざるをえない。
これに対し、私たちは次のように要求する。
(1)日本国法務大臣は、第13回外登法問題国際シンポジウムの主催者側と韓国人参加者たちに対し、公式に謝罪せよ。
(2)法務大臣は、名古屋中部国際空港の出入国管理局の職員に対し、度を越した公権力の濫用によって、再びこのような恥ずべき事態が起こらないよう注意をし、調査を行なわねばならない。
(3)法務大臣は、このような恥ずべき事態の再発防止のために対策を立てよ。
これらの要求さえも黙殺されるなら、私たちは、世界各地で活動する人権諸団体と国際社会、そして世界の教会に今回の事態を知らせ、日本国政府に公式に抗議するであろう。
2008年7月2日
第13回外登法問題国際シンポジウム 参加団体ならびに参加者一同
韓国基督教教会協議会正義と平和委員会
韓国教会在日同胞人権宣教協議会
韓国カトリック司教会議正義と平和委員会
日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会
外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会